【佳作】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
正しく褒めると若者は育つ
山口県  儀間眞一  66歳

最近、「働き方改革」が求められているが、長時間労働や残業時間の改善を実現するためには、常に人材育成活動に力を入れる必要があると考える。その具体策の一つとして、「正しく褒めると若者は育つ」の有言実行を勧めたい。誰しも実力を正しく褒められると、やり甲斐を感じてさらなる努力を重ね、自ら率先して「働き方」も改革しようとするからだ。

以下、私の体験談をベースに、「働き方改革」に繋がる有効な人材育成方法について、「育成される立場」と「育成する立場」の両方から皆さん(若者&管理者)へ提言させて頂きたい。

私は1971年に製造業に就職し、46年間勤務した。当時の育成方法は、「叱って育てる」であった。

それは、工場のオペレータだけでなく、我々技術スタッフに対しても同様であり、耐えられずに退職する同僚もいた。

そういう環境下でも社員から尊敬され、話題に上がるM室長がおられた。

「厳しさと課題解決力が、天下一品の方だ」

「三現主義を徹底的に重視する人だ。大変な努力家らしいぞ。」等々。

私は、入社3年目にM室長に初めてお会いした。そこは、若手担当者の業務発表会場であった。全部門の管理者が勢揃いされた中に当然M室長も同席されていた。各人の発表後、管理者が自由に寸評を行った。しかし、M室長だけは、沈黙のままであった。

ついに、私の発表の順番が来た。

自らの五感で調査した事実とそれに対する考察を真剣に発表した。発表後、M室長が突然口を開かれた。

「文献だけでなく、実態をきちんと観て、自分の言葉で発言している点が良い。その姿勢を大切にし、今後とも活躍して頂きたい。」

「他のメンバーも、自分の目で正しく観て発言することを実行して頂きたい。」

会場全体が、一瞬、襟を正した雰囲気になり、管理者達の顔にも緊張感が走った。私は、M室長が、一担当者の業務内容をきちんと聞かれた上で発言された姿勢に感動した。また、正しく褒められたことで、「さらに努力しよう!」という気持ちが漲り、その後の活動で成功することが出来た。この経験は、私が管理者になった後、人材育成をさせて頂く立場になってからも大いに役に立った。

部下のC君は口数が少なく、一見、仕事の進捗も遅いため、評価も低い方であった。しかし、対話を重ねてじっくりC君の話しに耳を傾けていく内に、新たな知恵を提案できる貴重な人材であることが分かった。それ迄は、性急に回答を求められたため、発言し辛かっただけであったそうである。私が多くの社員の前でC君の特長を言及した頃から、彼は徐々に積極的なスタッフへ変貌して行った。その後、彼は室長に昇進し、「部下の褒め育て」も実行してくれた。対話を継続し、伸び悩む社員の実力発揮にも大いに尽力した。また、C君の活躍振りを見て、彼の同僚達が自分も管理者として頑張るぞと言って努力するメンバーが増えた。その結果、職場全体が活性化し、メンタル面で悩む人も激減した。

私自身も、昇進されたM部長(後に社長就任)の下で、現在の産業界が求めている「働き方改革」を先取りした活動を25年前にさせて頂いたことに深く感謝している。人材育成活動に力を入れることで、人を財産として大切にする社風が根付き、残業ゼロ前提の業務推進計画が実現出来ることを実証出来た。人財育成活動が改革実現のための柱であった。

また、私は、複数の会社において、「生産性向上」を目的にしたコンサルタント業務も担当した。それぞれの会社の事情で、生産性向上のための具体策は異なったが、人財育成のための「褒め育て」は、同じ方法で支援させて頂いた。会社が違っても、自らの良い点を正しく褒められると、年齢に関係なく、多くの人々が実力を発揮して活躍された。その結果、目的であった「生産性」は大幅に向上し、長時間労働や残業時間も改善することが出来た。「働き方改革」を通じて、産業界が大いに発展することを期待したい。

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