【 厚生労働大臣賞 】

自分マニュアル
長野県  渡辺 勝 63歳


 若者の皆さん、元気に学び、働いていますか? 現在の仕事、自分に合わないな、転職しようかな、なんて考えてませんか?
 全国に何万人もいらっしゃるという引きこもりの方、元気に……いや、自分のペースで落ち着いて暮らしていますか。
 人生、楽しんで生きたいですよね。うじうじ悩んだりしてるうちにアッという間に終わっちまうのが人生劇場。これが若い頃ってわからないんだ。年寄りが皆、そう言うけど実感ないでしょ? 気持ち的にまだ千年くらい生きれると思ってるからかな。
 いきなり上から目線のあいさつで失礼しました。今回は自らも発達障害の傾向を持ちながら、何とか還暦過ぎるまで生きてきたオッサンの、独り語りです。気に障ったらゴメンなさい。
 自己紹介がてら少し自分のこと、語らせてもらいます。
 私は現在、オンラインで高校、大学受験生の英語とか小論文を教えています。全国津々浦々の生徒諸君と画面を通じてだけど語り合えるのは楽しいです。いろんな地方の名物やおいしいものなんかも教えてもらったりしますよ。それから……趣味は小説を書くこと。これは別にプロじゃないのであまりお金にはならないけど、文学賞コンクールに応募してます。五十才を過ぎて始めたんだけれど、幾つか入選を重ねて、先月は地元の新聞で記事になったりしました。
 ちょっと無理して言うと……今が一番しあわせかな。
 ここまでの道のりは、そりゃ聞くも涙、語るも涙。短気で衝動的、おまけに飽きっぽいからどこの職場も長続きしなくて……口で言えないみじめな思いもいっぱいしました。どこかに自分に合った、やりたいことってないんだろうか。何度、死にたいなあ、なんてつぶやいたことか。そんな風に思い悩んだこと、ありませんか? もし、あったら以下の文章が参考になるかもしれません。
 (1)自分マニュアルを見つける
 誰でもいつの間にか「性格」と称されるレッテル、貼られてた。他人が言うから自分もそんな性格って思い込んでいるけど、実はそんなシンプルなもんじゃない。もっともっと精緻に自分を見極めてみよう。例えば、「オレはこんな場面だと、あの反応が出るな」「こんな時には楽観的(悲観的)だ」「○○すると夢中で時間を忘れる」「こんな事言われると一番、うれしい(あるいは腹がたつ)」
 何でもよい。断片でいい。気がつく度にメモるのもお勧め。えっ、そんなことしてどうなるって?
 自分がわかるヒントになる。自分の特性、傾向が知れる。よく「自分と向き合う」って聞くだろ?
 口で言うほど簡単じゃない。時には苦しい作業。でも、これからの人生を切り開く鍵になるはず。自分の得意、不得意が見えてきたら……得意領域で活躍する準備に入るんだ。得意ってわからない? 他人より半分くらいの労力で他人と同じくらいの成果が上げられる(そう思える)分野のことだよ。「自分を知る者は英雄」だと古人も述べている。覚えておいて。
 (2)得意な分野(と思われる)の目安がついたら、とことんこだわろう。
 ネットやSNS、図書館など情報ツールはすべて使って研究してみよう。上っ面でなく、出来うる限り深く、関連分野も含めて。その際、特に有効なのはその分野で実際に仕事をしている人に逢ってみること。貴重な経験談をもらえるかもしれないし、何より印象の強さが違うからだ。
 一つ、大きなポイントを挙げておきたい。何をするにも、どの分野へ進むにも、初心者の頃が挫折しやすい。「こんな事やってても」とか「やっぱり向いてないのか」という疑惑や不安はつきもの。石の上にも三年。三年はやり続ける。こだわり続ける。そうすれば次のステップが見えてくるし、たとえ方向転換する場合もその経験は必ず役に立つ。
 最後に。迷ったとき、困ったとき、答えはいつも足元にある。心が知っている。
 特に目新しくもないことを語りました。けれど、この文章が誰かの目にとまり(たとえ一人でも)心の琴線に触れることがあれば、と願います。

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