【厚生労働大臣賞】

若者の皆さんへのエール − 明るく、楽しく、元気よく
大阪府  増田倫子

若者の皆さん、「明るく、楽しく、元気よく」仕事していますか。
これは、私が若手社員だった頃、少々おっかない、けれども腹の底から尊敬できる部長(当時)が言っていた言葉です。


私は現役を退いて約10年になりますが、現役の人から話を聞いたり、新聞報道を見たりする中で、胸を痛めていることがあります。


それは「若者の退職」です。


なぜ若者の退職は問題なのか。


新卒一括採用、長期雇用を基本とする日本型雇用システムにおいて、若者の退職は、言うなれば「親よりも子供が先に死んでしまう」ことだからです。

会社は生き物です。

会社は、カネという血液が回ることで生き続け、それが行き詰まると倒産という死を迎えます。カネを回すにはどうするか。健全に回し続けるには、しっかりと利益を出し続ける必要があります。では、利益を出し続けるにはどうするのか。社内に営々と受け継がれてきた有形無形の遺伝子(資産)を受け継ぎながらも、時代の要請・環境変化に適応し、絶えず改善を図り、より良いものにして次世代に引き継いでいくことが必要です。

若者が退職してしまうと、会社としての命のリレーが出来なくなります。これが一番の問題です。


なぜ若者は退職してしまうのか。

在職時を思い出すと、退職してしまう若者には元気がありませんでした。

“担当している仕事では自分の専門性が活かせない”、“即戦力として扱ってもらえる外資系に転職する”等々、理由は幾らでも出てきますが、私は、本当の理由は別にあると考えていました。

何故なら、職場で「明るく、楽しく、元気よく」仕事している人で、辞める人はいなかったからです。

自尊心が深く傷ついてしまい、新天地に移ることで「本当の自分」に戻れると考えているようでした。


若者の皆さん、どうか職場で、何かをやり切ったという自信を得られるまでは辞めないでください。消極的な心情を隠し持ちながら転職しても、結局行った先で同じ課題に直面するからです。後悔しか残らない可能性が高いのです。


「明るく、楽しく、元気よく」仕事をするにはどうすればいいか。


まず第一に、働くということを正しく理解しましょう。

会社は学校ではありません。

1万円払って何かを教えてもらうのではない。1万円をもらうために、会社に対し具体的な貢献をしなければなりません。

どんなにいい大学を出ようが、いい資格を持とうが、それを目の前の実務に落とし込んで会社に貢献することが出来ない限り、殆ど意味が無いのです。

日本の会社はOJTが中心ですので、まともな教科書などないでしょう。与えられた仕事を通じ、先輩や上司と報・連・相を繰り返す中で、彼らの中にある暗黙知を自分の中に取り込んで消化していく必要があるのです。

たとえ粗雑でも、自分の頭で考え抜いた証を見せてください。

たとえ嫌がられても、先輩や上司に食らいついていってください。


第二に、いい手本を見つけ、真似しましょう。

職場を見回すと、年齢や職位に関わらず、そこの中心人物として活躍している人がいるはずです。

彼らは、仕事を通じて会社に貢献していることを自負しており、自信に満ちあふれています。周囲の信頼も厚い。外部との折衝にも強い。

彼らが具体的に、どのようにして問題解決を図っているか、よく観察しましょう。

そして、彼らの考え方や手法を自分の中に取り込みましょう。


最後に、これだけは誰にも負けない、というものを作りましょう。

“○○のことなら××に聞け”と、職場の皆に認知される得意分野を持てると、自分に自信がつきます。

役員や部長が席に来て、意見を求められもします。

経営判断に資することが可能となり、大きなやりがいが生まれます。


時代の流れの速さ、深さに圧倒されそうになりますが、こんな時こそ重心を低くし、長期的視点を失わずに前に進みましょう。

あなた方若者こそが日本の希望です。

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