【 奨 励 賞 】

【テーマ:現場からのチャレンジと提言】
石の上にも三年
あすなろ会  柏 谷 海 音  24歳

私は社会人になり、三年目になります。両親や親戚からは、「ついこの前まで、大学生だったのにね!」と言われます。しかし自分自身では、大学生の時代は遠い記憶のように思えるほど、社会人になってからの毎日の出来事は豊富に感じます。

「三年」という言葉から、やはり私は「石の上にも三年」ということわざを思い出します。そして、この言葉は、私が社会人になる前に父がアドバイスとして送ってくれた言葉であり、私が何か、働く上で辛いと感じた時に大事にしてきたことです。

昨今は、「第二新卒」という言葉が定着してきているほど、新社会人の短期離職とその後の転職が増えていると言われています。さらに、短期離職者を受け入れる採用側も増えていることが、会社を辞める決意がしやすい、また転職がしやすいと考えてしまうのではないかと思います。私は、そのような短期間で離職と転職を行う世代の若者と同世代にあたり、身近にも友人が何人も転職をしている者がいます。そのため、短期離職と転職を「絶対に良くない」とは言い切れない部分も見ています。

一方でやはり、ひとつのことを続けていくことは絶対に強みになると実感しています。入社してからを正直に振り返ると、幾度となく働くことの辛さを感じ、出社することが億劫な時がありました。しかし、そのひとつひとつの出来事を思い出すと、すべて「できない」「難しい」「わからない」ということに起因しています。作業の中で、先輩方がある問題に対して解決策を話し合っていた時、私も何かできないかと会話を聞いていると、「ここに居ても内容が分からないと思うから、片付けとかできることをやっていて」と言われた時がありました。その時私は、助けになれない悔しさ、私が「わからない」ということが、「わかる」人たちとの間に疎外感を受けました。この出来事をきっかけに、私はわからない問題があった時は少し難しい内容でも手伝いを申し出て、いま自分のしている仕事が、後にどこへ流れていくのか考えたりすることにより、広い視野で考えるようになりました。少しでも広く浅く自分の係ではない仕事にも知識を深めていくことにより、「わからない」辛さや疎外感を覚えることが減りました。

見たことがない、やったことがない、というものを日々理解するようにしていくなかで「三年」が過ぎようとしています。わからないことを聞かれる側になりつつある立場の今、恐縮ではありますが、同世代、または後輩にあたる世代の人たちに提言するのであれば、やはり、どんな転職ブーム、売り手市場であっても、続けることの強さは変わらないと思います。会社の仕組みや、自分や他の人の日々の仕事に理解を増やし続けられると、自分の会社における存在意義が沸いてくるのではないかと思います。

戻る