【 佳   作 】

【テーマ:現場からのチャレンジと提言】
私が社会人として言えること
静岡県  紫 由  31歳

私は、看護師として働いている。看護師と言うと、よく「えらいね。」や「すごいね。」、「大変だね。」などとこの職業を選んだことを尊敬されることが多い。それはとても喜ばしいし、励みになるが、私にはどうしても引っかかるものがある。

私は、母親から「看護師は需要があるし、安定した職業だからいいよ。」と小さい頃から言われていた。小学校・中学校・高校と、特にやりたいと思う職業が思いつかなく、何となく小さい頃から意識していた看護師という職業を選んだ。だから、看護師を職業として選んだことを褒められたり尊敬されたりすると、何となく違和感を覚えてしまうのである。こんな違和感を抱えつつも、今頑張って働いている。

誰もが、なりたい職業に就けるとは限らない。しかし、どの職業も、尊敬しうるものだと私は思う。周りの人が私を大変そう、とみるのと同様に、私もどの職業も大変だろうな、といつも感じながら見ている。自分がやりたくてやっている仕事でなくても、頑張って仕事を続けていることが素晴らしい。

どの職業も大変である。仕事の大変さは、仕事自体の専門性や複雑さだけではない。大抵の仕事は、同僚との協力やチームプレイが欠かせなく、コミュニケーションなどの社会性も重要とされる。就職後、私は、社会の厳しさに対面した。

看護師は、患者さんの命を守る重要な役割を担っている。患者さんの命を守るためには、医師や患者の家族、看護スタッフなど、様々な人たちとのチームプレイが欠かせない。

看護師は厳しい人が多い。元々、真面目で思いやりのある人が多いのだが、それゆえ正義感が強く、人に厳しくなりがちである。常に時間に追われているため、優先度を考えた行動が必要だ。時には、同僚に応援を依頼することも重要である。

私は、とにかく、昔から一人で行動することが好きだった。遊びや勉強、登下校も。協調性というものが極度に欠落していた。人と協同して作業をすることも苦手だ。このことが、社会に入りとても苦労したことだ。

新人時代は、仕事ができず常に怒られていた。他のスタッフはみんな怖い先輩ばかりで、人に仕事を依頼するなんて、とてもできなかった。新人だから、全て自分の力でやる必要があると思っていた。だけど、一人で黙々とやっていると怒られた。私には、なぜ怒られるのか、理解できなかった。

今考えると、周りから見た自分は、扱い辛い存在だったと思う。報告・連絡・相談がタイムリーにできない、同僚や同期と仲良くしようとしない、仕事以外の必要なことは話さない……。

自分がもし、自分の様な人と接するとしたら、やはり同じ職場で一緒に働くのは辛いと感じると思う。自分に社会性が身についていたら良かったのに、と本当に思った。部署をいくつか異動し、様々なスタッフと仕事をしてきて、ようやく気付いた。

社会性は、元々身についているものではない。自分で磨いて身に着けるものだと思う。自分にも言えるが、いつまでも社会性を身に着けられないのは、怠慢だと思う。

これから就職する人たちに伝えたいことは、できる範囲で社会性を身に着けておく必要がある、ということ。自分にそのスキルがなくて苦労したから、みんなに伝えたい。

難しいことばかりでなく、誰かと仲良くしたり、相手を思いやる行動ができるだけでもいい。社会に出る人たちみんなが、お互いを認め、高め合う関係を作り、楽しく仕事ができるようになるといい。

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