【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
働く若者たちへのエール
東京都  西 川 泰 樹  70歳

現在、70歳の私は退職をしている。仕事をもたない身となった私だが、若者に向けて、仕事について語ることを、お許し願いたい。

過去を振り返ると、会社の中で、それなりの地位を得て、会社にも貢献してきたと思っている。しかし、自分は仕事で何を成し遂げたのだろうか。何を遺したのだろうか。答えが見つからない。

なぜだろうか。仕事を通じて実現すべき夢を持っていなかった、ということに思い当たる、夢ということについて、考えてみたい。


夢とは、将来実現したい願いや思いのことである。大事なところは、将来ということにある。将来を自ら描くことである。自分は、このことに向き合っていなかったと、いまにして思う。

「少年よ大志を抱け」という言葉があるが、少年の時期から大きな志を持ち、それを大切に育て、挑戦してきた人間は、実際には少ないのではなかろうか。人生は長い。仕事についてから、仕事を通じて、何を成すのか、自分の将来の目標を設定することが大事だ。

会社に入ると、組織に飲み込まれ、そこへの適応に勢力をそがれ、周囲の状況に流されてしまいがちである。若者たちに向かって、大志を抱けとまでは言わないが、中志、小志でもよい、組織に飲み込まれず、将来の自分を考えてほしい。


具体的には、爺分の先輩たちを見ろと言いたい。ただ、現状維持の人もいれば、目標を定め、頑張っている人もいるはずだ。反面教師もいれば、目標となる人もいるはずだ。近くに、見つからなくても、小説やビジネス書の中にもモデルはいる。なりたい自分を、自分の仕事と職場の中からを探してほしい。仕事こそが、自分を鍛えてくれるからだ。


かくいう私は、夢をしっかりと描けなかった人間だ。しかし、同僚や先輩にはきちんと夢を描き、それを実現した人がいる。例えば、自分の入った業界(時計業界)について、知識を深め、生活者の立場から、疑問を発して、これに答えるというかたちで、時の研究家として、名を成したのは、B氏である。仕事を通じて、知識を深め、文筆家という夢を実現した。

海外営業という仕事で、海外に新しい出会いを求め、現地に新しい会社をつくってきたのは、土佐出身のE氏。会社の発展を自分のやりがいに同化させた。海外での活躍を夢にしてきた男だ。その後、自分の趣味を生かしたギャラリーを開き、成功したと聞いている。

この様に会社に使われるのではなく、自分が会社を使い何ができるか。そんな中で、自分の夢を育てることができるのではなかろうか。真剣に仕事に取組み、自分の強みを育てることから、自分の夢が育っていくのではないだろうか。


これからの時代、人の仕事がAIに代わられていくという危機感がある。AIにはできないことが、働く人に求められている。理想を求め、自分にしか描けない夢を生み出し、夢を実現すること。これこそ働く若者に求められていることである。

仕事の中で、自分の将来を見出すこと。このことを、若者に考えてもらいたい。自分への反省をこめて。(了)

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