【 佳   作 】

【テーマ:現場からのチャレンジと提言】
ほんの少しが大きなうねりに
滋賀県  山 村 清 子  46歳

私の大好きな言葉です。

「あなたが生まれてきたことで、この世の中がほんの少し良くなれば、それで十分。」

私は「相談員」という仕事をしています。悩みを抱えている方のお話を聴き、辛い気持ちに寄り添い、一緒に解決方法を考えます。

問題は複雑にからみ合い、解決の糸口が見つからない相談ばかりです。

家庭内暴力、金銭問題、仕事が見つからない、生きているのが辛い、職場でのトラブルなど。

相談者はがんじがらめにされ、身動きの取れない状態になります。

どうしていいかわからない、この先ずっと暗闇から抜け出せない。

絶望感から、自殺を考える方もいます。

疲れ果てた相談者に、私が必ず言う言葉があります。

「あなたが話したいことを、聴かせてください。

大丈夫です。私はちゃんと聴きます。」

この言葉を言うだけで、泣き出す方もいます。きっと辛い気持ちを、誰にも話せなかったのでしょう。

私は何の力も持っていません。

借金を肩代わりすることも、

暴力を止めることもできません。

けれども「聴くことだけ」は、できます。

何が辛いのか、

なぜ消えたいと思っているのか。

身体中を耳にして、一生懸命に聴きます。

話をした相談者は少しだけ楽になり、少しだけ前に進む力が湧きます。

ほんの少しずつでも前に進めば、ある日いきなり「ぱっ!」と目の前が開けます。

そういう光景を何度も見てきたので、それだけは、保証できます。

私にできるは「聴くことだけ」です。

でも、それで十分だと思います。

今、この文章を読んでいる「あなた」に教えてほしいことがあります。

あなたができることは、なんですか?

あなたができることを一所懸命にすれば、それで十分だと思います。

職場で元気に挨拶をするのが得意だとしたら、いつでも元気な挨拶を心がけてみてください。計算するのが得意であれば、正確な計算結果を出せるようチャレンジしてみてください。

すべての仕事を完璧にこなすのは、不可能です。

今あなたにできること、得意だと思うことを伸ばしてみるチャレンジをしてみてください。あなたがいることで、この世の中が「ほんの少し」良くなれば、それで十分です。

みんなの「ほんの少し」が集まれば、「大きなうねり」になるでしょう。

あなたがより良く働くチャレンジをすれば、きっと世の中に「ぱっ!」と光の射す瞬間が生まれるでしょう。

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