【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
きっかけを自分から見つける
宮城県 伊 藤 愛 里 27歳

私は小学校の頃から福祉に興味があった。そのため迷うことなく福祉系の大学へ進学したのだが、在 籍中のボランティアが自身を見つめる良い経験となった。

大きな企画であったのが、障害をもった方にアウトドアを楽しんでいただくためのイベント。様々な 障害を持った方々が集まり、私たちボランティアと一緒に2泊3日のキャンプをするというものだった。私が担当したのはダウン症の女性。初日は暑い日で、女性は暑いから帰りたい、お風呂に入りたくない、 ご飯も食べない、と拒否が多くあった。ひとつひとつに私は戸惑い、心が挫けてしまいそうだった。し かし、2日目、3日目になると女性の柔らかい表情になる瞬間を見つけることに意識が向いていた。ど う支援するか、声のかけ方によって女性の受け取り方は変わってくるし、感情を表に出すことが苦手な 方でも真っ直ぐ向き合うことで相手の感情は自然と見えてくる。女性の笑顔を見たら疲れなど一瞬で吹 き飛んでしまった。これをやりがいというのだと、初めて実感した。

閉講式で私は進行を担当した。利用された方全員から感想を頂いたのだが、本当に感動した。うまく話すことができない方も前に立ち一生懸命に話してくださったし、声の出ない方は身体全体で感謝の気 持ちを伝えてくださった。閉講式が終わると、担当した女性が静かに泣きながら近づいてきて、私に抱 きついた。その瞬間、こらえていた私も一気に涙がこぼれた。言葉はなくても、女性の気持ちが全部伝 わってきたような気がした。

この経験は大きかった。それまでの私は、障害と向き合う方法が分からないでいた。障害に対して知 らず知らずのうちに身構えていたところもあったのかもしれない。利用された方々は、ひとつひとつ時 間をかければどの活動もやり抜くことができていた。ほんの少し時間がかかるだけ、ただそれだけで私 たちと何も変わりはない。だから私達は普通に接していればいい。困っているようであれば手を貸せば いい。難しく考える必要はなにもなかったのだ。

私は今、福祉事業所で働いている。利用者はみんな個性的。笑顔が素敵な人。おしゃべりが大好きな 人、力持ちの人、綺麗好きの人。全員それぞれの個性を持っていて、全員輝いている。私は、その個性 をのびのびと発揮できる環境を作っていきたい。それが今のやりがいである。

今回はたまたまボランティア活動が自分の考えと向き合うきっかけとなったが、どこで、何が気づき を得る大きな機会になるかは分からない。言い方を変えれば、どこにでもきっかけは転がっている。受 け身でいるのは楽だが、せっかくの一度の人生。自ら様々な場面に飛び込んでいき多くの経験をしてい きたい。

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