【 奨 励 賞 】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
働くということ
福岡県 坪 井 太 郎 19歳

私は今年で20歳になる。あと2年もすれば、おそらく社会に出て働く。しかし、未だに「仕事」に対するモチベーションや意義などについて前向きな思考を持てていない。ただ、そんな自分にも転機にな りそうなことがあった。それは「子ども食堂」との出会いである。


子ども食堂は、地域の方々がボランティアで子どもたちに美味しいご飯を格安または無料で提供して いる。食事のあとは子どもたちと一緒に勉強したり遊んだりもする。

子ども食堂は、地域で地域の子供たちを守っている。

そんな子ども食堂に私が参加することになったのは、それが大学の実習だったからだ。この話を聞い た時は何も考える事なく、単に単位のためと思い参加した。しかし、子ども食堂では多くの貴重な経験 を得た。

子ども食堂では、子供たちが「ただいま」と言って食堂にやってくる。地域の方々に対する子どもた ちの元気な「ただいま」とそれに笑顔で応える地域の方々の優しい「おかえり」。

ただそれだけの言葉のやり取りでさえも、これまで全くの赤の他人であった私に対して発せられる子 どもたちの「ただいま」というのは、とても意味深い。なぜ、子どもたちは、自分に対して、こんなにまっすぐにコミュニケーションをとってくれるのか?

また、こんなこともあった。ある日、子どもたちに聞かれた。「先生はなんで子ども食堂に来とると?」 と。すぐに答えることはできなかった。すると別の子どもが直後に「俺は遊ぶのが楽しいけん来よるー」 と大声でさけんだ。何でもないやりとりだったがなぜかこのやり取りが頭から離れなかった。結果、子どもたちの面倒をみに来たはずの自分が、逆に子どもたちから多くの課題をもらい、そこから学ぶこと になった。

今の自分は毎日、とりあえず目の前のやらなければならないことをこなしながら生活している。大学 での講義、毎日の実習、アルバイト、友人関係など、色々と頭を悩ませながら過ごしている。たぶんこれは、社会に出て働き始めても変わらないものだと思う。やるべき仕事、上司との関係性、同期との競 争。おそらく、自分が思うように、やりたいようには生きていけないだろう。でも、子ども食堂に通う 子どもたちは違う。様々な環境にいようと関係なく、自分の素直な感性に従って純粋に子ども食堂を楽 しんでいる。それは「子供だから」という一言では片づけられないもののように思う。子どもたちとは 違い、大人には抱えているものの中身が違うだろう。でも、いまを目いっぱい楽しむこと、素直な感性 を捨てないことは、大人も子供も変わらないだろう。

子ども食堂に通うようになって、少し仕事に対する考えが変わった気がする。与えられた仕事を言わ れた通りにこなし、それ相応のお金を稼ぐ。これだけ出来ればいいと思っていたが実際は違った。自分 がこなす仕事の中に楽しみを見つけて、すべてを楽しめるように考えるようになった。実習も同じよう にどんな活動にも楽しみを見出したい。

世の中は、これから働く若者に対して色々な苦言や不安を募らせてくる。でも、それをどれだけ跳ね 除けて、楽しんで行動することが出来るか。ここにかかってくるのだろう。まずは自分が率先をきって いきたいと思う。

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