【佳作】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
カンボジアの友人の働き方改革を通して
大阪府 ぴ ー す け 26歳

私には、カンボジア人の友達がいる。彼の名はリック、私と同じ26歳で奥さんと息子さんの3人家族 である。6年前に、留学でカンボジアに行った時、路上で知り合い、家族ぐるみの付き合いをさせても らっている。彼の仕事は、トゥクトゥクというバイクが客席を牽引する乗り物のドライバーで、観光客 相手に商売をしている。彼は、アンコールワットのある街シェムリアップの中心部からバイクで2時間 の田舎で育ち、高校を卒業後、お姉さんのお土産屋さんを手伝いながら、ドライバーとして生計を立て てきた。パブストリートと呼ばれる飲食店街が立ち並ぶ通りで、観光客が来るのを待つのが彼のワーク スタイルである。観光客が通りかかったら、遺跡の写真が載っている地図を見せてツアーの勧誘をする のだ。

2年前のある日、彼から “I have no work for two month” とメッセージがきた。よく聞くと、こ こ最近パブストリートでの警察による取り締まりが厳しくなり、客待ちをできなくなり、2ヶ月も仕事 がないとのこと。奥さん、4歳で食べ盛りの息子さん、そして奥さんの両親を養わなければいけない彼 にとっては危機的状況であった。

そこで、私は働き方を変えることを提案した。まず、今まではカンボジアに来てツアーに参加してい ない観光客が主なお客さんであったので、カンボジアに来る前に彼のトゥクトゥクツアーを予約できる ようにホームページの作成をすすめた。その際、遺跡の写真、簡単な遺跡ツアーの説明などを書くこと で、安心してお客さんが旅行を計画したり、ツアーの利用を検討してくれたりするのではないかという 私の見解も伝えると、英語と日本語の二か国語の説明文とたくさんのカンボジアの写真が掲載された見 やすい予約ホーム付きのホームページが1ヶ月で完成した。

次に、SNSで情報を発信することをすすめた。カンボジアでは、電話線の開通よりも先に携帯電話 の普及が早く、スマートフォンを所持することがカンボジア人としてのステータスの1つになっていて、 SNSが大流行りである。そんなカンボジアにであるが、日本では、どうしても、カンボジアと聞くと、 遠い国、貧しい国、発展途上国等、身近な存在として捉えられにくい現状がある。カンボジアで生まれ 育ったカンボジア人だからこそ発信できることがあると私は思っていた。週末にアンコールワットで家 族で行ってピクニックをしたことや、おつまみのカエルやコオロギを捕まえに朝の4時に起きて漁に いったこと、4歳なのに息子が小学校に通っていることなど、カンボジア人にとっては当たり前でも日 本人が聞いてびっくりするような話題を毎日写真や動画付きで発信するようになった。次第に観覧者数 も増え、ホームページ以外にもSNSを通して、今では、毎月2、3件はツアーの予約があり、安定した収入を得ることができるようになった。

このようにSNSを通して、働き方を変えて安定した収入を得ることができるようになったリック。

現在、彼はSNSを通して古着の収集を行い、ごみをごみ箱に捨てる習慣のない村の人々にごみを拾う ことの大切さを教えながら、ごみ拾いのボランティアの対価として、服や文房具の配布をしている。カ ンボジア人による、カンボジア人のための活動である。働き方を変えることにより、ひとりの生き方が 変わり、また他の人にもよりよい作用をもたらすことになった。

私は、彼の働き方改革を通して、目の前に厳しく難しい壁が立ちはだかったとしても、見方や方法を変 えて行動してみることで、よりよく生きられることを教えられた。失敗してしまうかもしれないが、リ スクを恐れずまず行動してみることが大事である。素直に私の提案を信じ、行動に移した彼を誇りに思 う。私も、何事も挑戦してみようと思えるようになった。オークン チュラン(クメール語でありがとう)

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