【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
〜職業に貴賤なし〜
広島県 大 下 由美子 56歳

今夏(7月16日現在)日本列島は、連日猛暑を通り超え、「危険な暑さ」と評される酷暑の中にある。

加えて「平成30年7月 西日本豪雨」は、西日本を中心に多くの無惨な爪痕を残し、発生から11日目に 入った今日でも、予断を許さない状況が続いている。

被災地では、被災された方たちが連日ボランティアの支援を受け、日常生活を取り戻そうと懸命に頑 張っておられる。

ある方は家族や友人を亡くし、「もっと強く非難を呼び掛けていたら」等と悔やみ、行方不明者を必死 に探し続けておられる。

住宅の浸水や損壊、道路やライフラインの寸断等、長く険しい道程に思いを馳せ、心は痛む。広島県 は比較的天災が少ない地域だと思っていたが、「花崗岩・真砂土・ため池」等というキーワードが災害の 深刻さを物語る。

「まさか、自分の住む地域がこんな状況になろうとは」インタビューで多くの人が語る言葉である。報 道で何度も悲惨な状況を目にする。けれども私たちはどこか他人ごとのように思ってしまうのは、いた しかたない。

今回の災害で、私は同僚と一緒にボランティア活動に参加した。拠点法人の老人ホームがある地域の 一部が、床下浸水等の被害に見舞われたのだ。住人と一緒に物を運んだり、床下に潜り込んで土砂を運び出すバケツリレーをした。

普段は冷暖房の効いた部屋でのデスクワークが多く、正直きつかったが若い職員に交じって何とかや り終えた。今後も続く被災者の方達の計り知れないご苦労に、頭が下がる。

さて、私が今回考えてみたいことは、いわゆる「3K」と呼ばれる職業についてである。

「きつい・汚い・危険」の略で、主に肉体労働を指した用語で、介護・清掃・土木・建築・警備等多 岐にわたる。「ブルーカラー」と呼ばれ敬遠されがちである。

実際、私が若かった頃付き合っていた人は工員で、いつも爪の中が真っ黒だった。その人とは結局別 れたが、現在はその業界で会社を立ち上げ社長をしているという。

一方「新3K」というのもあって「ホワイトカラー」と呼ばれるIT系・事務職・管理職等でも「きつ い、帰れない、厳しい」とある。

私の元職の看護師に至っては、「休暇がない、規則が厳しい、給料が安い」等の6項目を加え、何と 「9K」と言われるそうだ。何れにしても、自分に合った職業かどうか、やりがいのある仕事かどうか等を見極める必要がありそうだ。

一昨年の12月30日、89歳で亡くなられた渡辺和子さんの著書「置かれた場所で咲きなさい」の中に、印 象深い場面がある。3歳位の子どもを連れた母親が、水道工事をしている人達の傍を通りながら、「坊や も勉強をしないと、こういうお仕事をしなくてはいけなくなるのよ」と語るシーンがある。

恥ずかしながら私も若い頃は、前述の考え方に近かったのかもしれない。夫も「ブルーカラー」なの で、スーツを着こなしている男性を見ると、たまにキュンとするのは、当時の名残りかもしれない(笑)。

近所で古屋を壊し更地にする工事を、2軒目の当たりにした。わが家は今春から、水廻りのリフォー ムをしている。暑い中、ひたすら働く人達を見るにつれ、尊敬の念が募る。今回のボランティア体験で、 私の考えは揺るぎないものとなった。

「肉体労働は素晴らしい!」の一言に尽きる。とは言え、自然を相手に過酷な時も多かろう。危険な 作業も多く、実際に仕事で命を落とされる人もいる。一方、何かを作り上げるという達成感・充実感で、 日々仕事に励んでおられるのでは、と察する。一日の仕事を終え、お風呂に浸かった後に飲むビールの 美味しさは格別だろうと、想像は膨らむ。

50代半ばの私が今言えることは、「職業に貴賤なし」。どんな仕事も社会から必要とされ、あなたは必 要とされている存在なのだ。

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