【 努力賞 】
【テーマ:仕事を通じて実現したい夢】
働くこと 〜昔の自分を見つめて〜
兵庫県  山 下 陽 子  27歳

15歳。多感な時期。高校に入学したばかりの私は、突如として学校に行くのを辞めた。先のことなんて考えなかった。とりあえずすべてに嫌気が差していた。勉強、校則、親、先生…。高校なんて正直どうでもよかった。なんとなく決めた高校になんとなく入学した。だから辞めることに何の躊躇もなかった。働けばいいや…そんなぐらいで考えていた。

 母親は私を必死に止めた。中卒での就職の厳しさ、これからどうしていくのか、すべてよく考えてから動きなさいと私に言い聞かせた。母親は、県内の高校片っ端から電話をして受け入れてくれる高校を探した。学校にも行かず、乱れた生活を送っていた私。学力もなければ、素行も悪い。そんな私を救ってくれたのは、たった一校だけだった。後の私の人生を大きく変えることになるたった一つの学校…。この年の秋、私はその学校に転入した。また辞めるのではないかと、誰もがそう思っていた。

 高校に入ってまともに受ける授業は、まるで外国語を聞いているようだった。けれど私は前とは違った。何も目標はないけれど、ここで見捨てられたらもう終わりだとわかっていた。将来働くために、ただそれだけのためにそこに座っていた。転入後も、幾度となく親が呼び出されるようなことはあったけれど、幸いにも、私がその学校を辞めることはなかった。尊敬できる人に出会い、自分の未来を考えるようになった。

「働くために高校を卒業する」この目的は少しずつ変わり、もっと先を見据えられるようになっていった。私が一番遠ざけてきた学校、そんな場所で働いてみたい。自分が学校に行かなかったときのあの気持ちを客観的に見てみたい。そんな好奇心が、今の私を作っている。

私は現在、高校で教員として働いている。部活に受験、目標のある子はもちろんだが、過去の私のように、何も目標をもつことができない生徒もいる。それでも学校になんとか来ている生徒を見ると、どうにか力になりたいと思う。助けてやりたいと思う。

私が働くことを通じて実現したい夢。それは、ひとりでも多くの子どもたちに目標を見つける手助けをし、何か目標をもって学校を卒業させてやることだ。人生を変えるような大きなことはできないかもしれないが、とにかく何か目標を持たしてやりたい。心からそう思い、私は日々学校という場所で働いている。そして、日々、昔の自分を見つめ直している。

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