【 努力賞 】
【テーマ:多様な働き方への提言】
ワークライフバランスの実現の為に
東京都  磯 元 浩 亮  25歳

現在,ワークライフバランスの実現が求められている。価値観の多様化が進展している現代社会において,自分らしい生き方を実現することは,住民のQOLを高めるうえで欠かせない。

しかし,現在の働き方に関する意識や環境は,ワークライフバランスの実現が容易とは言い難い。その背景の一つに,労働者の働き方の二極化がある。日本型雇用慣行の崩壊やグローバル化の進展に伴い,企業は人件費の調整をしやすい非正規雇用を多く利用するようになった。今や非正規雇用は全雇用者の3分の1以上を占めている。現在わが国では非正規雇用の所得が非常に低く,結婚や出産などが経済的に困難な人が多くいる。一方で,減少した正規社員には労働負担が過重にのしかかり,長時間労働の常態化が発生している。

また,女性の育児などにかかる負担もワークライフバランスの実現を困難にしている。現在,女性の社会進出が進み,結婚・出産を経ても仕事を続けることを望む女性が増加している。しかし,職場環境についてみると,出産を契機に退職する女性は依然として多い。また,出産後についても,保育所が十分整備されておらず,入所を希望しながらも出来ていない待機児童の問題は依然として深刻である。また,育児休暇について女性はおおむね取得できていても,男性の取得は極めて少なく,育児負担が女性に偏っている現状をうかがわせる。

これらの問題は,仕事と個人の時間の両立を図るワークライフバランスの実現を阻害するものであり,住民のQOLを向上させるためにも,行政としては早急に対策しなくてはならない。

では,具体的に何をすべきか。私は,労働の二極化については,非正規雇用から正規雇用への転換の促進を働き掛けること,そして,女性の育児負担については,男性の育児休暇取得の促進や,保育施設の拡充が重要と考える。

非正規雇用から正規雇用になれない原因はいくつか考えられるが,その一つに,非正規労働者が正規雇用として就労できるだけの技術・能力を備えていないことが指摘できる。現在でも職業支援事業が実施されているが,企業の需要に応えきれているとは言い難い。そこで,即戦力となる人材を育成すべく,今どんな人材が求められているのかを,企業から調査する必要がある。そして,その需要に即応した教育プログラムを策定し,事業の実施者と協力して実行する必要がある。これにより,非正規雇用の貧困状況を改善し,同時に正規雇用の労働負担軽減も実現できるのではないか。

女性の育児負担の軽減にあたっては,男性の育児休暇促進が欠かせない。現在,男性の育児休暇は,希望する人も多くないが,実際に取得できている人はほとんどいない。しかしこれでは,依然として残る性別役割分担意識を改善するに至らない。そこで,育児休暇の取得を一定割合以上実現した企業に対しては企業名を公表するなど,インセンティブを高める取組をする必要がある。また,待機児童の解消のための保育所の拡充も欠かせない。鉄道会社と連携して駅の中に設けることを働きかけたり,廃校舎などを利用するなどして,経費を抑えた施設の拡充に努めていくことが必要となる。同時に,家庭的保育事業の拡充も重要だろう。保育士有資格者や子育て経験者を募ることで,核家族化が進み,両親,とりわけ母親に偏りがちな育児負担の軽減を図る必要がある。

ワークライフバランスの実現は,個人の生産性の向上をもたらし,企業にも社会にもよい効果をもたらす。企業や住民の方たちにこれらの取組を実施することで,健康で豊かな生活を住民が送れるよう,努めなければならない。

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