資本主義は、資本蓄積の高まりとともに、その対極に格差と貧困を生み出す。2007年以降、雇用の規制緩和が行われた。結果、今日の日本社会において格差と貧困が大きな問題となっている。私は、特に非正規雇用労働者は大きな問題だと思う。
非正規雇用で働く人は、男性約3割、女性は約7割を占める。女性が多い理由は、結婚・出産を機にそれまでの仕事を辞め、育児が落ち着いた後、再び就業する人が多いからだ。それにより、女性の就業率はM字型カーブを描いている。日本の少子高齢化による労働力不足が問題になっている。解決策として、女性や外国人労働者の活用が挙げられているが、このM字型カーブは女性の就業の大きな妨げとなっているのである。
多くの産業で機械の導入が進んでいる。それにより、労働の簡単化が起こるとともに労働力の流動化が高まる。規制緩和により、企業が多くの非正規労働者を雇うことを可能にした。かつての年功序列制賃金や、終身雇用制度などは企業にとって負担でしかない。
私は、現在スーパーでレジのアルバイトをしている。私のような学生以外にも、多くのパートタイムで働く主婦の方々がいる。レジでは、店員が機械を操作し、会計作業を行っている。しかし、オーストラリアでは既にセルフレジが多く用いられているのだ。
昨年、私はオーストラリアの第2の首都メルボルンへ留学に行った。現地のスーパーを利用した際、会計は自分で行うセルフレジであった。オーストラリアのスーパーでは、機械により自分で会計を行うことが一般化している。セルフレジは、会計の時間短縮が可能だ。それまで、会計は店員にしてもらうことが当たり前と思っていた私は、とても驚いた。セルフレジは、店員による会計よりも便利だと思う。
今後、日本のスーパーでもセルフレジの導入が進み一般化すると思う。これまでレジで働いていた主婦たちは、スーパーでの労働の場を奪われるだろう。機械の導入は、便利で効率性や収益性の向上というメリットがある。しかし、労働の場を奪うという、恐ろしい現実を孕んでいると思った。
非正規労働も機械の導入も、資本家が自身の儲けのために用いるものに過ぎないと思う。それらは、本当に私たちの幸福につながるだろうか。また、主婦たちは定年までパートタイム労働者として働くことは可能だろうか。また、企業はそれを許すだろうか。そのような疑問が、オーストラリアのスーパーと日本のスーパーを比較して思い浮かんだ。
私は、主婦たちが再び就業するために非正規労働を始め、いつまで働かせてもらえるか分からない不安な就業をしていると思う。今の日本社会では、女性が育児のために仕事を辞め、非正規雇用で働くことを当たり前と捉えているのではないだろうか。女性は、育児のために仕事を辞める。それは、とても厳しく残酷な選択である。しかし、事実7割もの女性はその選択をしている。そんな選択を迫る社会は、残酷ではないだろうか。私は、主婦たちが非正規労働者として働くことが、幸福度の高さとは思わない。機械の導入によって労働の簡単化が実現した今、ただ機械を操作するだけに過ぎないからだ。全ての女性が、いつかは出産や育児のために選択を迫られる。これは、大変重い問題だと思う。女性が出産や育児を迎えても、仕事を続けることが可能な制度や仕組みが必要だ。現在の日本社会においては、それがまだまだ十分ではない。
政府は、GDP600兆円の目標を掲げている。しかし、より多くのGDPを得ることが個人の幸福につながるのかは疑問である。日本は、戦後の高度経済成長からバブル崩壊によって、低成長に苦しんできた。規制緩和により非正規雇用は拡大し、多くの主婦、女性たちが労働している。しかし、主婦たちは、本当は正規労働者として働きたいという願いを持っているのではないだろうか。だからこそ、女性が正規雇用で働けるような多様な働き方の整備が必要だと言える。