【 努力賞 】
【テーマ:多様な働き方への提言】
なぜ田舎の大人はつまらない顔をして働くのだろう
山形県  アベカナ  20歳

芸能人が『仕事をしている』ということを私たちは忘れがちである。TVの向こうであの人たちはおいしいものを食べたり綺麗な洋服を着たり、時には歌ったりなどしてニコニコ笑っている。私たちは田舎のお茶の間でそういった『自分とはかけ離れたライフスタイルの人達』を羨んでは、自分の仕事にイライラしていたりする。

『働くこと』ってそんなに面白くないのだろうか。「山形で好きなことを仕事にするのはほとんど無理なんだから」とうちの親は言っていたけれど、本当にそうなのだろうか。若者が本当に夢を叶えたいと思った時に起こる障害は、現代では着々と取り払われつつあることを私の親は知らない。

『パラレルキャリア』という働き方が広まりつつある。これは経営学者ピーター・ドラッガーが提唱した新しいライフスタイルの形である。本業を続けながら、自分の興味のある別の仕事に挑戦したり、非営利活動に励んだりすることを言う。副業ともまた違う。なぜならパラレルキャリアの大前提は『お金を稼ぐこと』ではなく『夢を叶えること』だからだ。

 私の尊敬する農家の兄ちゃんは、田舎で実際にそのような働き方を実践している。普段田んぼで作業していると思ったら、かりんとうを作って販売していたり、週末にはライブハウスでイベントを開いていたり、ゲストハウスの大家さんまでやっている。肩書は数えきれない。なんでも仕事になっているし、好きなことをしている。

 パラレルキャリアが浸透しているのには、インターネットの普及が大きく関係している。自分の興味のある専門的な情報を、一瞬で手に入れることができるようになったのだ。このことによって人々の興味の幅が広がり、知識の量が増えた。田舎に住んでいるから遅れているなんてこともない。インターネットの上では皆平等な関係だからである。例えば農家の兄ちゃんは、自分の作ったお米を会社のHPで販売したり、ブログを通して知り合った東京のバンドマンを自分のイベントに呼んでいたりする。インターネットでの繋がりをリアルに持ち込んでいるのだ。

 田舎は夢を叶える場所であればいいと思っている。あの空き家もシャッター街にも希望を持っていいと思うのだ。もう東京に行かなければ夢が叶わない時代は終わった。どこにいても、働きながら好きなことができる。

 現実的ではないなんて言葉で片付けられる『起業する』とか『ミュージシャン』になるだとかいう大きな夢は、本当に、現実に起こっていることだと言いたい。ただそれが身近に感じられなくて、自分とは違う世界だなんて遠ざけてしまっているだけなのである。

 だから、つまらない顔をして働かないでほしいのだ。退勤したら一般人のふりをして、諦めないでほしいのだ。いつの日か田舎のお茶の間が、夢を語れる場所になることを願っている。

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