私の実家は旅館を営んでおります。その実家がある伊豆、修善寺にある『あさば』という旅館は2015年9月に中国旅行会社に買収されました。そしてその手によって大きな変革が行われています。ここ数年低かった客室稼働率を高めるため、会社が外国人向け、特に中国人向けに企画するツアーに買収したホテルや旅館を組み込むのです。結果、『あさば』はその中国人団体観光客のニーズに応えるよう変化し、客室稼働率8割を超えるようになりました。また『あさば』を中心に修善寺の観光組合はより日本を訪れる中国人客が増えることを期待しています。
しかし中国人旅行者へのニーズの応え方、日本人旅行者へのニーズの応え方、あるいは諸外国からの旅行者からのニーズはそれぞれ異なります。『あさば』でもこれまで行ってきたすべてのお客さんにきめこまかく行ってきたサービス方法がうまく機能せず、従業員の方は不安を抱えていました。
今後日本は少子高齢化が進み、人口は減少していくと考えられています。その一方でアジアなどの新興国では多くの人が生まれ、中国人のように日本にやってくる人が増加してくるでしょう。こういった中で、日本の旅館業は大きく変化を起こし、より広いニーズに対して応える必要があります。
私はこの広いニーズに対応するために人種や民族を超えた多くの国籍の人を従業員として雇いたいと考えています。私の所属する大学のゼミにはアジアを始めとする多くの外国籍を持つ人が在籍しています。そしてその人たちと共にゼミの活動をすると、日本人の私には見えていなかった視点から意見を生み出してくれます。そこにはその人が自らの国の背景を知っているからこその意見というのも多く存在しています。
接客業において「相手を知ること」はとても肝心なことです。どのような距離感で話せばよいのか、どんな話をするのか、何を求めているのか。そこで必要なのが先ほど述べた、外国人が自らの国の背景を知っているからこその意見です。この意見を知ることで、いったい何を外国人旅行客が求めているのかより細かく知ることができます。
けれどもダイバーシティを取り入れた旅館業には多くの障害が存在するでしょう。特に労力を費やすと考えているのは文化の違いです。日常生活ではさほど気にならないような文化でも和の心を大事にする日本旅館では外国人労働者にとって大きな障壁に感じられるでしょう。またその逆も同様に日本人労働者も外国人労働者に対し文化面で理解を深める必要があります。
それでも私はダイバーシティを取り入れた旅館業には費やす労力以上の効果があると信じています。2020年には東京オリンピックも控え、海外からの旅行客は更に増加していきます。広がり続けるニーズに細かく応えられる旅館を生み出すこと、それが私の考える新たな旅館業の姿です。