【 努力賞 】
【テーマ:多様な働き方への提言】
時間を大切にできる社会へ
山口県立山口高校通信制  井 林 美 沙 17歳

私は現在高校生である。今まであまり働くということをしたことがない。したことがあるといえば、少しのアルバイト経験、または学校の職場体験だけである。今回、「働き方の多様性」について考えるに当たって、以前働いていたアルバイトを思い出してみた。

私が働いていた所は、弁当屋だった。毎日、その日や次の日に備えての仕込み、お客さんが来店すると、レジうち、接客をしていたのだが、いつも決まって12時前後の「お昼時」になると朝の比にならないくらいのお客さんがやってくる。絶え間なく来店するお客さんの対応に追われるあまり、焦ってミスをしてしまうこともあった。しかし、そんな忙しかった波は1時間少しすると収まるのだ。なぜ、このようなことが起きるのか。

それには、日本人の多くが朝から昼にかけて働き、昼に1時間程の休憩をとって、夕方もしくは夜まで働くという働き方になっていることが大きく関係しているのではないかと思う。多くの人がそのような働き方になっているのだから、当然、昼食を求める12時前後は人が一気に集中して、弁当屋に限らず飲食を扱う店舗は混雑してしまう。

そこで、もしも働く時間が細かく定められず、時間の自由な会社や企業が増えるとすれば、個々の一日の過ごし方に「ズレ」が生じるため、昼間のそうした人の混雑は減るのではないだろうか。そうすることで、弁当屋などのお昼の時間帯に休めない売る側は作業にゆとりが生まれ、また、来店するお客さんも待ち時間が少なくなる。飲食を扱う人だけでなく、働く時間を細かく定めないことで、労働者は時間にとらわれることがなく自由を広げられ、さらに負担の軽減にもつながる。

自由に働く時間を決めることができるようになるということは、夜遅くまで働いていたり、休日出勤をしていた人も、それをすることがなくなるので、家庭で一緒に食卓を囲んだり、休日は何処かに家族で出かけるなど、家族とコミュニケーションを取る時間を増やすことができる。また、適度に一人でリフレッシュをすることもできるので、労働による疲労の蓄積を減らし、過重労働による健康障害の予防にもなる。

だがここで、時間が定められないことで労働者に求められるものがある。それは自主性だ。個人で仕事の時間配分を行い、そして、効率的に進めていかなくてはならない。また、出勤時間などが定められていないことで、労働時間への意識の低下が起こりうる。そうしたことで、自己管理ということが時間の自由化では、大きなポイントとなる。仕事をする際、個人での自己管理の徹底という労働者側の課題があるのだ。そうした課題をクリアし、労働時間の自由が実現できた時、労働者には多くのメリットがある。しかし、企業によっては、取引関係等の都合上、なかなか実現が難しいというのが現状である。

誰もが働きやすい環境。そんな環境が整うことは、労働者にとって何よりの理想である。そこには、制度やルールの見直し、または、新しく作るなどのたくさんの困難もあるだろう。だが、実行は難しくても「働き方の多様性」について考えることが大切で必要なことだと思う。話題に取り上げられなくては、何も始まらないし、何も生まれない。多くの人が考え、意見を出し合い、交換することで、何かよい案が見つかるかもしれない。当たり前ながら、働いている時間もそうではない時間、つまりプライベートもどちらもその人の人生である。私は、働きたいときにしっかり働き、仕事以外の時間も充実させることができ、人生すべての時間を大切に出来るような社会を実現したい。これからも、「働き方の多様性」は増えていくだろう。それは、労働者の希望であり、可能性であるのだから。

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