【 佳  作 】

【テーマ:仕事を通じて実現したい夢】
最後の散歩道
福岡県  ももぴ  32歳

2016年3月31日、今年もまた大切に育てた子ども達と過ごす最後の日がやってきた。保育園で保育士として働いている私と数名の保育士と、4月から小学校へ行く年長組の子ども達と過ごす最後の日のお散歩。桜が綺麗だと言われている少しだけ遠い公園に出掛けた。育休中の先生がサプライズで産まれた子どもを抱いて公園に待っていた。子ども達は目をマンマルにして、「お腹から出てきたと?」「赤ちゃんかわいいね」「名前は?」と、優しく声をかけ赤ちゃんの頭を撫でていた。私たちの保育目標である「げんきな子・考える子・優しい子」を思い出し、私達の保育が間違ってなかった、と小さな赤ちゃんに優しくする姿を見ながら嬉しく思い微笑んでいた。再会を楽しんだ後、ゆっくり公園で遊びすぎた私たちに、小雨のサプライズ。心配して保育園から他の保育士が子ども達の様子を自転車に乗って見に来た。慌てすぎたのか傘を忘れていた為、結局子ども達は少し濡れてしまった。雨宿りをしながら、こっそり今まで頑張ったご褒美にと買った“綿菓子”。みんなで食べるとあっという間だったけど、「おいしいね」と言った子ども達の笑顔が忘れられない。子ども達はこの日の出来事をいつまで覚えていてくれるのだろう。赤ちゃんを産んだばかりなのに子ども達に会いにきてくれた先生、雨に濡れていないか心配で見にきてくれた先生、一緒に最後まで楽しみたくて少しだけ遠いお散歩にした先生。私たちが子ども達を愛してきたこの日々を子ども達は覚えていてくれるだろうか?感じていてくれているだろうか?

 保育園で教えてきた歌を、子ども達が大声で歌いながら歩く帰り道。最初は笑って歌っていた子ども達だったけれど、だんだんと声が掠れていく。私も一緒に歌を歌うけど涙で前が見えなくなって・・・今思えばお散歩中に普段はあんなに大きな声で歌を歌うと、近所の人たちからクレームが入るから少し声を下げるように言うはずなのに、私もきっと興奮していたのだろう。いや、最後の日くらいクレームを言われたら、この子達の為に謝ってやるってちょっと強気な自分がいたのかもしれない。保育園に着いた後、結局一人ひとりの子ども達を抱きしめながら泣いていたら「先生、本当は小学校に行きたくない」って言いながら一緒に本格的に泣き始めた女の子がいた。きっと泣き虫な先生の私がそう言わせてしまったのかも知れない。でもそれ以上に私たち保育士と過ごした毎日がキラキラ輝いていて、子ども達がまだまだここにいたい!卒園したくないんだって思ってくれたのではないかと思う。私たち保育士が毎日、子どもたちを愛してきた日々が保育園にはある。

 最近ニュースでは保育士や保育園について様々な意見が活発に議論されている。私たち保育士の声を聞くことなく、私たちの“想い”なんてまるで無視だ。3Kなんて言われているが、私たちは安い給料でも重労働でも汚くてもそれでも子どもが大好きなのだ。汚いと言われる排泄の世話では、子ども達の元気のバロメーターがそこにあることを世間に伝えたい。子どもの声は本当に騒音なのだろうか?町に元気な歌声が響くことがそんなにいけないことなのかな?

 私はこれからも毎日子ども達と楽しく過ごしていく。子ども達はやがて大人になり夢を叶え、また子どもを保育園に預けてくれるだろう。その時までこの保育園で働いていたい。そして夢を叶えていく子ども達を応援し続けたいのだ。積み重ねる日々の先に、保育園や保育士の社会の理解が深まっていくと信じている。保育士って世間に言われるより、数千倍も天職であることを私は伝え続けたい。

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