【 佳  作 】

【テーマ:多様な働き方への提言】
多様化を活かして絶えず刺激を受けられる職場を目指す

― 外国にルーツを持つ人と一緒に仕事したい理由 ―

東京都  グアリーニ・レティツィア  31歳

「◯◯さんとぜひ仕事したいです! なぜなら、外国人だから」

この言葉は、日本で働いている、あるいは働こうと思っている外国にルーツを持つ人であれば一度くらい言われたことがあるだろう。相手には悪意がないとわかりつつ、言われた側が違和感を抱いて仕方ない。たとえ、その発言の背景に「会社の多様性を増す」といった意識があったとしても、「外国人だから」と言われたらモヤモヤしても不思議ではない。なぜなら、その発言の裏に危険なステレオタイプが潜んでいる可能性があるからだ。

日本のトップ大学をはじめ、企業や団体などが国際化を目指している今日では「英語が堪能」の人を積極的に育てようとしている。特に2020年オリンピックが近づくにつれて日本を訪れる外国人観光客が増えつつあり、英語でコミュニケーションを取り対応することはもはやおもてなしだけでなく、あるサービスを提供するにあたって不可欠な条件である。このような必要性に迫られている企業は、一方は日本人社員の教育に力を入れつつ、他方は積極的に外国にルーツを持つ人を採用するようになった。しかし、その際に先入観や偏見に注意する必要があろう。

「外国人と働きたい」と主張する企業は、「社内で英語を話すこと」を期待していることが多いと思われる。なるほど、英語が堪能の人を雇うことによって外国にルーツを持つお客さんへの対応はもちろん、社内で英語を話せる機会も増やすことができるのではないかと考える人が少なくないだろう。しかし、その際に留意点が二つある。第一に、日本では未だに「外国人=英語圏」という偏見があるようだが、日本を訪問する人は必ずしも英語圏の人ではないし、「外国人」とはいえ英語が堪能とは限らない。第二に、日本に滞在する外国にルーツを持つ人は日本語で不自由なくコミュニケーションを取ることができる人がたくさんいることも忘れてはいけないだろう。「せっかく日本で仕事するなら日本語を使いたい」「毎日同僚たちと日本語で話して上達させたい」と思っている人が少なからずいる。Win-Winの関係を作るために最初から「外国人だから」と決めつけずに、それぞれのニーズや期待を明確にし、有意義な機会にすべきだろう。

また、「国際的なイメージ」を作るために積極的に外国にルーツを持つ人を採用している企業も少なくないだろう。しかし、その際に無意識的にも固定概念を強めてしまう可能性に注意する必要があろう。たとえばその人の異国的な外見を強調し、「金髪の白人」というステレオタイプ的な「外国人像」を繰り返し作ってしまうと既存の偏見を強化しかねないのである。

しかし、外国にルーツを持つ人と一緒に仕事することこそ先入観や偏見を失くすチャンスではないだろうか。たとえば英語を話せる機会を増やすだけでなく、他の言葉やその背景にある文化に出逢えるきっかけを作ることによって社員に新たな視点を提供することができるだろう。その出逢いもまた仕事で活かせる斬新な発想の誕生につながるのではないだろうか。

また、日本でよく知られている国だけでなく、なかなか行く機会がない国の人と絆を築くことによってビジネスの可能性が増えるのはもちろん、会社自体が予想もしていなかった方向へと航路を変えることさえあるだろう。

社内で英語を学べる環境を整えることや国際的なイメージを作ることが決してマイナスなことではない。しかし、外国にルーツを持つ人と一緒に仕事ができる職場はそれ以上の目的を達成できるのではないだろうか。人をインスパイアする姿を目指すなら、多様性を通じて絶えず刺激を受けられる場を作ることがその第一歩だろう。

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