【 佳 作 】
古くよりビジネスには三方良し、という言葉が存在する。産業医として様々な職場を見てきたが、職場併設型保育園を設置する職場は、子育てや労働に前向きで、労使、顧客、社会それぞれが明るい雰囲気であることが多く、職場併設型保育園の導入・普及推奨は、雇用環境整備における三方良しの方策と考える。
実際にすでに職場併設型保育園が導入されているA病院で職場併設型保育園について調査した結果を示す。A病院に勤務する対象者に質問紙による調査を行ったところ、13名中12名が、職場併設型保育園があることにより、病院で働きやすくなったと考えている調査結果となった(対象:20代医師11名(女性6名)、20代歯科医師2名(女性0名)) 。医療従事者の不足は社会問題となっており、労働者にとって魅力が感じる職場となれば、人材確保に有利であるため、使用者にとっても利点がある。安定して人材が確保できる医療施設は、顔なじみやかかりつけの安心感をもたらすため、受診者にとっても利点がある。社会にとっては、人材確保の問題だけでなく、子育て世代の労働継続につながり、効率的な社会を実現できる。小規模ながらA病院での調査から、職場併設型保育園は雇用環境整備において有効であると確信した。それだけでなく、職場というのは、利便性の高いところにある場合が多く、地域の拠点となりうる。自宅の近くに預けて職場に向かうより、職場に近い保育園に預けることで緊急時の対応も迅速になる。子供が心配な時も、昼休みに様子を見に行くことも可能となる。職場併設型保育園を作り、その職場の労働者家族のみにサービス提供するのではなく、外部にも提供することで、まちづくりにもつながる。
ただし、職場併設型保育園を設置する余裕がある職場ばかりではないことも事実である。また、A病院の好事例のように、様々な職場での試行錯誤が埋もれている。良い例も悪い例も、見える社会、共感・共有できる社会づくりを推奨すべく、公的な調査や補助の充実なども必要と考える。まず私は産業医として、A病院のような事例をまとめ、実際に現場が感じている職場併設型保育園の価値を正しく発信し、前向きな社会づくりに貢献したい。