【 佳 作 】
父も母も同じように働き、同じように家事を分担し、共働きでありながらお互いが主夫であり主婦。そのような姿を私は将来自分の子供に見せたいと思っている。そうして社会も、子ども自身が自分も将来そうしようと自然に思うことのできるものになっていてほしいと願う。家族生活と仕事の両立が、私が働くことを通して実現したい夢である。
『お父さんって週末だけ家に帰ってくるものじゃないの?お友達のお父さんは毎晩家に帰ってくるんだって。』当時小学生だった私が母に尋ねた質問だ。私が幼い頃から父は単身赴任をしており、私は一般的に父親とは週末だけ家に帰ってくるものだと思い込んでいたらしい。父はこの話を母から聞き、1人悔しくて泣いたという。家族のために遠い場所で頑張っていても子供の成長を近くでは見てやれず、一緒に過ごす時間が少ないことで家族との心の距離もできかねない単身赴任。なんとも皮肉なものだと思うと同時に、自分の将来の夫や子供にはこのような思いをしてほしくないと強く思う。
仕事と家族という2つのテーマは日本では互いに相反するものとして語られることが多い。古くから女は結婚したら家を守り、男は働きに出て家族を養うべきという考え方が根強く、女性が結婚して会社を退職し子育てに追われ、子供が大きくなると再就職の壁にぶつかるという問題は未だ解決されていない。また、夫の家事参加の時間数は先進国中でも最低ランクである。加えて、最近は子育てに関する不安も多く、周りの友人たちも産んだとしても子供が幸せになれる社会かどうか…とすでに心配し、子作りに関して前向きな人は少ない。
私はかつてキャリア志向が強く、大学を卒業後は就職をするつもりで企業研究も熱心にしており、結婚かキャリアならキャリアを優先するしかないと思って就職活動を迎えようとしていた。しかし、大学在学中の1年間のノルウェーへの留学は、私の働き方に関する考えかたをガラリと変えた。何よりも驚いたことはノルウェーでは家族生活を守ることを前提に仕事に関する事柄が決められていたことである。
ノルウェーといえば男女平等の国。女性の就労率は高く結婚後の離職率は低い。出産後も女性が働けるようにと育児休暇は厳格に制度化され、保育環境も整備されている。育児休暇においては男性も女性と同じように子育てに参加すべきという理念のもと、1993 年にはすでに父親のための育児休暇制度も導入されている。まさに今の日本が見習いたい政策ばかりである。しかしここで私が言いたいのは日本もノルウェーのようになるべきということではない。ただ、今のノルウェーがあるのはノルウェー人たちが仕事と家庭の両立という課題に真剣に向き合い、解決しなければいけないという信念のもと努力を重ねてきたからである。そして彼らも最初から全てを受け入れていたわけではなく、政府が主導となってまず政策を整えることで国民も生活を変えざるをえなくなり、制度や権利を徐々に受け入れていったという側面もある。そしてそれが当たり前になった世の中で子供達も当たり前のように男女関係なく家事を手伝ったり、男女間の差別を嫌うようになったりしていくのだ。
だから、そのためにこれから将来を担っていく私たちの世代は、妻や夫という枠組みにとらわれず家庭生活と仕事を両立することが可能な社会の実現のために努力をしていかなければいけない。どうせ変わらないと嘆くのではなく、変えてやるのだという気持ちでやればいつか道は開けると信じて、夢の実現のために頑張っていきたい。