【 入 選 】

【 テーマ:働くこと・職探しを通じて学んだこと】
モノやサービスの向こう側で
神奈川県  金木犀  23歳

近年、時給を通常よりも割高に設定したにもかかわらず人が集まらず、店舗を閉めざるを得なくなったという、ある外食産業のチェーン店のニュースが話題になりました。

深夜の営業をアルバイトスタッフ一名で担わなければならなかったり、長時間に及ぶ勤務を余儀なくされたりといった実態が明かされ、人々に大きな衝撃を与えました。と同時に、不当な条件や給与で働かせ、使い捨てる「ブラック企業」「ブラックバイト」といった言葉が新聞やテレビでもよく取り上げられるようになりました。

私自身もかつて、それと似たような経験があります。

採用の決まったある求人は「委託業務」という形態での契約だったのですが、勤務形態や給与の体系が曖昧なことが気にかかっていました。さらに時給に換算すると、居住地の神奈川県の最低賃金を下回っていたため、不審に思いキャリアカウンセラーに相談。

「委託業務」の場合、それぞれの自治体ごとに定められている「最低賃金」の基準が適用されないことをそこで初めて知ったのでした。

規定された最低賃金を下回っているとはいえ、雇用形態が違う以上、法律上は違法とは認められないという事実にショックを受けました。

ブラック企業。ブラックバイト。

そうした言葉は知っていたものの、こんなに身近な所にも、という驚きを禁じ得なかった私。このような、まさか私が、という意識こそがそうした問題を気づきにくくさせ、さらなる被害をよぶのかもしれません。

また、たとえなにかおかしいと思っても、知識も身近に相談できる人もなければ、甘んじて働き続けることになってしまうのではないでしょうか。目に見えるあまたのモノやサービスの向こう側で、涙をのんでいる人は少なくないと思うのです。

言葉は広く認識されるようになったものの、一人歩きの域を出ず、いまだ根絶されるにはほど遠い現在、私達一人ひとりにできることはなにかないものでしょうか。

従業員を大切にできないような会社は消費者にとっても、本来魅力的ではないはずですが、安い価格で提供される商品に恩恵を受けている一面があるのも事実です。

とはいうものの、消費者が商品を選ぶ視点や基準は、決して価格だけではありません。  

たとえば、環境に配慮されているか、信頼できる商品やサービスであるかという視点。

それに加えて、今後はそれらが提供される過程で、そこで働く従業員がきちんと大切にされているかという視点をもつことで、そのような企業が自然と淘汰されていくことにつながるのではないでしょうか。 

私達一人ひとりが提供されるモノ・サービスの向こう側の人達に想いを馳せ、意思表示としてのお金の使い方を考えるということそのことがささやかながら働く人を大切にする社会への一歩につながるのではないかと思うのです。

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