【 努力賞 】
【 テーマ:働くこと・職探しを通じて学んだこと】
働くことにまつわる、4つのアドバイス
埼玉県  山 本 榮 一 59歳

会社生活を35年余り続け、引退した。それを振り返ったとき、思うことがある。どんな人生も自分の思いどおりにいくものではない。問題を抱え、不安と憔悴に駆られ、将来が見えない、苦しい時が必ずある。しかし、生きるとはそういうものだと思おうではないか。特に会社生活では、過ぎ去ってしまえば、どんな修羅場も思い出話になるだけなのだ。そういう心構えでいれば乗り切れるということ。

それから、どんなときも他人と比較しないこと。羨望や劣等感などは比較から生じる無意味な無力感だ。自分より幸運だの実力があるだの思われても、その人は異なるところでやはり問題を抱えているものだ。肯定的に自分自身を生きる、この基本を認識したうえで、君に4つのアドバイスをしよう。

1.仕事には向き不向きがある

私は営業職を二年やったが、苦労しても達成感はないし、人に頭下げるのが苦手だった。がむしゃらにやったが楽しくなかった。ところが、後に与えられた、社員の教育研修の仕事は、最新の考え方の教育プログラムを作ることが楽しかった。水が合う、という感覚だった。

自分は何に向いているか、その判断基準は、苦労せずできてしまう仕事、である。やりたくない仕事でもやってみたら意外にも苦労せずできてしまった、これも自分に向いている、ということだ。だからいろいろな仕事にチャレンジしてみるのはよい。その仕事が自分に向いていると思ったら、どんどん突っ走れ。向いていないと思ったら、負い目を持たず、そこから何かをつかんで次のステップに進もう。

2.人間関係を良好に

そもそも人間は人とのかかわりなしでは生きられない。「幸せ」は良い人間関係を持っているかで決まる。もし合わない上司がいたとしても反発するより、自分はこういう上司にはならない、と反面教師として学ぶこと。上司も組織も数年で変わり、新しい人間関係が生まれるものだ。人の多様性を認めることは後で利いてくる。管理職になると部下の責任も取るようになるので、部下一人ひとりへの理解力が試される。いい関係を作るコツは、その人をどんな時でも認めてあげることである。仕事の業績は一人であげられるものではなく周りの協力で決まる。人間関係を良好に保つことはとても重要なのだ。

3.家族を愛する

幸せは良い人間関係で決まる、と言ったが、まずは家族を大切にすること。親とはこまめに連絡を取ること。どんな仕事もいつかは自分と関係がなくなるが、家族とは一生その関係が続く。家族を犠牲にし、仕事を優先にしても、その仕事はいつか終わる。がむしゃらに仕事すればよい、と信じてきたひとが、いつの間にか親を失って孝行もできなかったと後悔する。子や妻との時間をもっと作るべきだったと後悔する。そこで後戻りはできないのだ。だから若い君たちには言っておきたい。家族を愛すること。愛を持って行動すること。今の生き方の延長がずっと後の幸福を決めるのだ。

4.生活習慣を見直す

どんな環境のなかでも人はそれに適応し生活を習慣化している。朝起きてから夜寝るまでの一定のパターンのなかで、食事内容は、運動は、睡眠の質は、健康管理は、そういう視点で習慣化された生活を時々評価してみる。それを改善することは心身の健康を保つために重要である。健康に問題があれば働くことに影響が出てしまう。若いうちは無理がきく、と思ってもそれはほんの少しの時間だ。働き続けるために、今の生活習慣をレビューし、改善し続けること。

君の仕事の成果は、必ず世の中の人に役立っている。そしてその結果自分への報酬があるのであり、金のために働くものではない。君が生活することで経済が生まれる。君の仕事により恩恵をこうむる人がいて、その積み重なりが新しい文化、歴史、思想となり、次の世代に引き継がれていく。それがゆえに働くことは重要なのである。であればそれに前向きに取り組んでいく姿勢を保ち続けようではないか。

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