【 努力賞 】
【 テーマ:働くこと・職探しを通じて学んだこと】
遠回りしてでも働く
大阪府  つばめママ 40歳

昨年末、パート仲間が急逝した。40代前半で私とほぼ同世代の訃報に、職場は悲しみに包まれた。彼女とは挨拶程度しか言葉を交わす機会がなかったが、自分に厳しくどこか凛とした雰囲気を漂わせている女性であった。

そのうち、聞くともなく彼女の話が聞こえてきた。彼女には中学生と高校生の息子さんがいること。シングルマザーで二人の息子さんを育てていたこと。病と闘い、入退院しては復帰していたこと。子供のためにがむしゃらに働いていた背景が何となく見えてきた。

彼女のお葬式には高校生の息子さんが喪主を務められた。彼はこの春高校を卒業し、念願の調理師専門学校へ入学する予定のはずだ…と噂に聞いた。

2人の息子さんを残して、天国へ旅立ってしまった彼女はきっと無念だったことだろう。さらに、残された2人の息子さんのことを思うといたたまれない気持ちになった。

「他人事」とはとても思えない。なぜなら私自身もまた、2人の子供を抱えるシングルマザーだからである。

あれから数カ月たち、4月になった。今年もまた新入社員の紹介があった。名前を聞いて誰もが「あっ」と驚いた。その中に、急逝した彼女の息子さんがいたからだ。どこか母親の面影を残した18歳の青年。亡くなった彼女の気持ちをくみ、上司が配慮して入社を勧めたのだと誰かが話していた。今どきこんな会社もあるんだなとびっくりした。それと同時にどこかホッとした気持ちにもなった。

自らの調理師の夢をいったん保留にし、まずは弟を卒業させることを決断した兄。自ら描いた未来に反して、人生思い通りにいかないことを18歳にして突きつけられた青年。決断までにどれほど悩み葛藤があったことだろう…。

だがその反面、こうも思う。

彼はまだ若い。きっと遠回りしてでも調理師の夢を実現することだろう。私はそう信じている。そして初めて手にしたボーナスで欲しかった掃除機を買ったのだと嬉しそうに話す彼は一家の大黒柱であり、主夫でもあることに気づかされる。その姿に敬意すら覚える。

「私も負けてられないな」と同じ部署で働くことになった若者に今日も勇気をもらい、心の中でエールを送る。

私自身も夢半ば。遠回りしてでも働き続けたい。子供たちを守るために今日も1日、明日も1日と頑張らなければと思う。

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