【 佳  作 】

【 テーマ:多様な働き方への提言】
女性は働くべし
茨城県  鈴 村 徳 子  62歳

一度も仕事に就くことなく結婚し働かなくても生活できる女性は、夫の収入だけでも生活ができる事情があるかもしれない。又、女性は、家事・育児に専念することが重要であるとする考え方もあるかもしれない。果たしてそれはなんとも羨ましい話だろうか。一方、仕事に就かない女性が、働きたいけれどやりがいのない仕事はしたくないわ、などと言う。それは、贅沢な台詞であり、女性の甘えでもあり、幸せな所でもある。男性であれ女性であれ、家庭生活を維持し家族を養わなければならないとすれば、決して口にできない言葉である。

社会で働くことは、一人の社会人として必要なことである。それは、単に収入を得ることや職場で活躍することに留まらないからだ。働くということは、家庭生活・地域社会を含めて社会を構成している一員となり、人と人との関わりがあるということである。仕事を通しての経験や考え方を伝え合い交流することは、大きな社会貢献である。働く女性が母親になり、日々の家庭生活の中で、世の中の仕くみや真剣な親の思いを語ることも極めて重要な社会貢献なのである。働く女性にとって、仕事と家庭を両立させるのは、そう簡単なことではないが。

責任ある仕事に就き、自分の能力を発揮し、継続していくには努力を要する。時に、人間関係に悩み、仕事の重圧に耐えながら、自己管理もしなくてはならない。だから、仕事を通して手にした経験や出会いは貴重な財産であると思いたい。仕事をしていれば、充実感、達成感、存在感も味わうことができる。生活の糧を得るための仕事であるが、人生を豊かにするのも仕事である。社会事象の背景や政治経済を理解し、自分なりの考えをもつことができ、自信につながっていく。

更に、女性自ら働き、収入を手にし、自らの資産を構築しておきたい。経済的自立は、生活の安定と自己実現につながる側面が大きいからだ。夫あるいは他者に経済的に依存した生活は、自由度が低くなり行動が限定される。夫に依存していれば、突然の解雇や病気などにより、将来の生活などに不安材料を抱えることになる。一時、二人の子供たちを保育園に通わせて仕事をしていた。保育料金は私のほぼ一ヶ月分の給料であった。高額な支払いはわずか数年である。仕事を継続すれば、ボーナスも手にし貯蓄も増えていく。仕事をしながらの子育ては容易ではないが、夫婦で知恵を出し合い助け合えば、なんとかなるものだ。

一方、職場などで女性同士、固定的な考えの枠にはめずに支え合いたい。職場で研修や勉強に励む女性に「家庭を疎かにして」などと非難めいたことを口にしないようにしたい。子どもの育児におわれて働く女性が、子どものいない同僚の女性に「子どもがいないからいいわねえ」などと軽く話してはいけない。その女性は、子どもを授かりたく悩み、不妊治療中かもしれない。子どもが時々熱を出して急に早退する女性に「この仕事、進まないじゃないの」などと我が子を心配する母親の心情からかけ離れた言葉がでないようにしたい。

女性は、仕事と家庭の両立の難しさ、母親となり子育ての苦悩、子どものいない悲しみなど互いに理解し合えると思いたい。同性同士、分かり合えることを生かし、更に居心地の良い職場をつくっていきたいものである。

女性が働き易い職場、活躍する社会になるためには、まだまだ課題は多い、それでも、「女性は働くべし」と言いたい。

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