【 入 選 】
今年の4月からスクールソーシャルワーカーとして働き始めた。学校現場は初めてである。多くの私の同級生は今年の3月に退職し、それぞれ第2の人生を歩き始めた。自営業の友人もそろそろリタイヤを考え始めている。「えっ、還暦過ぎて始めるの!」と驚かれることもあったが、半年過ぎて今、思い切って挑戦してよかったと思っている。もちろん精神的にも肉体的にもきついと感じることはあるが、それ以上に子どもたちの笑顔に救われる。
スクールソーシャルワーカーの仕事は、児童・生徒を取り巻く環境に注目して、問題の解決を図っていき、子どもたちがより良い環境の中で生活できるようサポートをしていくことである。よくスクールカウンセラーと間違われるが、スクールカウンセラーは臨床心理士で「児童・生徒本人の心のケア」に取り組む仕事である。スクールソーシャルワーカーは社会福祉士、精神保健福祉士で「児童・生徒の福祉面の環境整備」を行なっていく。仕事内容は違っても悩んでいる子どもの力になることでは同じである。
現在、教育現場では多くの問題が起きている。不登校、登校渋り、いじめ、虐待、問題行動、非行、そして貧困。特に最近は「子どもの貧困」がクローズアップされている。6人に1人が貧困ではないかというデータも出ている。また自閉症スペクトラム(広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群など)の子どもたちも増えている。子どもたちが楽しい学校生活を送るためには、そういった問題をどう改善していくか、一人ひとりに向き合い、細やかな解決策を探っていく必要がある。
私は福祉の相談員として長年働いてきたが、学校現場に入るのは初めてである。当初は戸惑うことばかりで、本来の仕事にどう取り組めばいいのか、右往左往するばかりだったが、教職員の方々や回りの人たちに支えられ、ようやく自分の立ち位置に着くことができた。何よりも子どもたちの純粋な眼差しや無邪気な言動に溢れんばかりの力をいただいた。
「子どもたちは誰も悪くない」半年間で確信したのはこのことである。問題行動を起こす子や非行に走る子どもたちであっても、その誰一人として悪い子どもはいない。その環境に問題がある、もしくはあったのである。その環境に介入し、必要な専門機関につなげる、あるいは連携する、関係する人や機関が一丸となって働きかける環境を整えていく、様々な社会資源や方法を探っていく。子どもの笑顔のために奔走したいと思っている。
還暦過ぎて無謀な挑戦だったかもしれない。しかしこの挑戦をしなければ現実を知ることはできなかったし、やり甲斐を感じることもなかった。今は「子どもの笑顔」を見ることができる仕事を得られたことに感謝をしている。「子どもの笑顔」を見るためには、私自身の五感を働かせながら、多くの方の協力をいただかなければならない。心を引き締めて取り組まなければならないと、日々言い聞かせている。
働くことに年齢は関係ない、若い人には負けられない、時折襲ってくる膝の痛みもなんのその、多少物忘れが多くなったな、と思うことがあってもへこたれない。もしも迷っている人がいたら、まずはチャレンジしてほしい。そこから生まれるものがきっとある。夢が広がるかもしれない。何もしないところには夢は広がらない。