【 努力賞 】
【テーマ:非正規雇用・障害者雇用で訴えたいこと】
笑顔を守っていくために
山口県立山口高校通信制 新谷優衣 17歳

笑顔がとても素敵な女性がいる。私が彼女と出会ったのは、地域のボランティア活動の支援センターだった。障害がある彼女は、少しの手助けが必要なものの、不思議と周りの人々を笑顔にしたり、温かい気持ちにさせる力があった。そんな彼女も普段は、他の障害者の方たちとある職場で働いており、週に一度ほど支援センターに顔を出していたのだ。

ところが、急に彼女の表情がすぐれず、ふさぎ込むことが多くなってきた。心配になった私は支援センターの職員の方と彼女の母親に聞いてみた。すると、どうやら、彼女は職場で何らかのトラブルがあったため、仕事を休んでいるらしかった。彼女の母親が悩んでいたのは、彼女が人に自分の気持ちを伝えることが苦手なこと、職員の方がきちんと彼女らの様子を見ていないことだった。「障害がある」と一概に言っても、抱えていることは同じではない。障害の有無に関わらずに接することは当たり前であるが、職員の方がもっと障害のある方一人一人のことを理解していれば、彼女が仕事を休むことはないのではと思った。更に彼女は、心の中で「嫌」と思っている時でも表情はにこにことしてしまうため、相手に彼女の本心を誤解されることが多々あるようだった。私が彼女の一番のチャームポイントだと思っていた笑顔が、彼女が傷ついている一つの原因であったと思うと、やるせない思いになり、悲しくなった。彼女は二週間程休養を取り、仕事に復帰した。しかし彼女自身も彼女の両親も、彼女が働き続ける上で、心配なこと、不安なことは解消しきれていないはずである。

現在、国も企業も世間も「障害のある方を雇用すること」自体だけにとらわれがちであるが、決してそうではないと思った。雇用率を増やしていくことも大切であるが、働く質を高めていかなければ、障害のある方が働く意味が薄れてしまうように感じる。給料等の問題で、経済面が不安な人も少なくないだろう。私自身も彼女のことを聞いてから関心を持ち始めたが、国は障害のある方の雇用について、もっと深く考えなければならないと思う。彼女のような場合、企業に状況を聞くだけでは何の解決にもならない。実際に企業へ足を運んだり、雇用されている方やその家族に話を聞いたりと工夫をして、解決に努めてほしいと感じる。私は、例えば企業に社会福祉士等の資格を持った専門の職員を付けるなどすれば、企業側も含め、安心できる人は増えるのではないかと考えている。

障害のある方の雇用では彼女のように、それぞれに様々な悩みがあるはずである。今の状況としっかり向き合い、まずは企業が障害のある方の雇用を見直し、誰もが平等に気持ちよく働ける場を築いていってほしいと思う。私ができることは、支援センターなどで彼女らと楽しく話をすること、将来自分が仕事に就いた時のために、障害のある方の雇用について理解しておくことであると思っている。そして一番大切なことは、多くの人に障害のある方の雇用について知ってもらい、一人一人が理解する輪を広げて、私たち自身で平和な社会を創り上げることだと、心から思う。  彼女の素敵な笑顔を、いつまでも守っていきたい。

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