【 努力賞 】
【テーマ:私が実現したい仕事の夢】
魔法の空間
岐阜県 てふてふ 16歳

最近、メール機能を使っていますか?

私は、将来ラジオに携わる仕事がしたい。深夜の孤独を、つまらないストレスを、日常の退屈を、払拭してくれるラジオは素晴らしい。

病気になり、学校に行けなくなり、昼夜逆転した。平日の深夜、これほど自己嫌悪に陥る時間帯はない。ただし、家の中だけだ。外からの電波を受信すれば、大の大人が最高にくだらないことを熱弁していたり、最高に最低な下ネタでゲラゲラ笑っていたりする空間がある。深夜のAMラジオだった。

それに触れた瞬間、世界が変わる。ラジオに集っている人たちは、全くの他人。でも、失敗談やおもしろい話を聞くだけで、距離を詰めるには十分なのだ。

ラジオは、一日二日で形成されるものではない。おもしろい番組構成がある地盤でヘビーリスナーが生まれる。いわゆる「ハガキ職人」というやつだ。ハガキ職人ができると、人は集まる。長年放送している番組を聞くと分かるが、パーソナリティーとハガキ職人の関係性は素敵すぎる。周りの人が踏み込めない、独特な関係性。とても憧れる。

巧妙な話し手のパーソナリティー、多種多様なリスナー、家の中では独りなのに、脳内はお祭りだ。自分の知らない曲が流れ、楽しい話が尽きない。こんな空間が他にあるだろうか。

しかし、楽しい空間があるのは、日常があるからだ。日常は突然崩れ去る。自然災害だ。

東日本大震災の際、情報伝達メディアですぐに機能したのはラジオだったという。地震が起こった瞬間、生放送だったラジオ番組は、急遽地震速報の情報を入れた。リスナーに対して、注意喚起をした。改めて言葉で言われて、助かった人がどれほどいただろう。震災後の地域密着型の番組は、被災者の方が一番知りたい情報を発信し続けた。聞き覚えのある方言と声に、助けられた人はどれほどいただろう。

今後、関東大震災や南海トラフ大震災が予想されている。東日本大震災の実績や教訓で、ラジオはもっと必要な伝達メディアになることは間違いない。さらに、スマートフォンの普及で、手軽に聞けることにより、大人数に届く可能性も俄然多くなってきた。

今後の日本といえば、超高齢化社会という問題もある。TBSラジオで放送されている「今晩は吉永小百合です」という番組で、ある日、

「75歳、女性の方からのお便りです。吉永さん、こんばんは。私はこの時間に吉永さんの声を聴くこと、とても楽しみに生活しています」

というメールが、吉永小百合さんの温かく茶目っ気がある声で読まれていた。解決だ。

一日疲弊して帰宅する会社員、育児で悩む主婦、部活でもめ事があった学生、今日も何もできなかった引きこもり、好きな人に告白された女の子、好きな人にフラれた男の子。今日も様々な人が、ラジオを聞いて、心が弾む。流れてきた曲に泣く。理不尽に怒られた内容に、怒りを込めて番組にメールをする。何気なく聞いていると、採用されて全てが吹っ飛ぶ。

生きていくことは苦しいが、はけ口があるとそれだけで楽しくなる。これは紛れもない事実だ。もし、誰かの人生を少しでも楽しくすることができたら、ラジオの魅力を誰かに知ってもらえたら、それは最高に幸せじゃないか。いいなぁ。

さて、そろそろ私の中の体内時計が鳴っている。イヤフォンを探そう。今日はどんな楽しいことが起こるかなぁ。死ぬほど笑う内容かもしれないなぁ。今からとても楽しみだ。

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