公益財団法人 勤労青少年躍進会 理事長賞

【テーマ:私が実現したい仕事の夢】
その夢に届くまで
神奈川県 保田健太 21歳

人はなぜ働くのか。多くの人が「生きる為、より豊かな生活の為、社会の一員としての義務だから」と答えるのではないか。私はこう考える。人は幸せに生きる為に働くのだと!だが、職場の人間関係や仕事に悩み、ストレスなどで病気になる人もいる。でも、社会の中で居場所があり、必要とされることは大変幸せなことだ。様々な人と出会い、多種多様な環境が自らを成長させるチャンスになる。人は人の中で人として豊かになっていく。

けれども誰もが働く環境を獲得できる訳ではない。特に、障害を抱えた人は途方に暮れている。私もその一人だ。私は、全身の運動麻痺という重い障害を抱え生まれた。正確には神経の麻痺で、体の感覚を脳に伝えたり、脳からの命令を体に伝えたりが難しいという障害だ。例えるなら、コンセントを差していない電化製品のような状態だ。だから、健常者が成長と共に自然に出来る全ての動作を、訓練で獲得するしかなかった。それは想像を絶する戦いだった。それでも0歳から欠かさず続けた訓練が、少しずつ芽を出し始めた。この芽が将来の花を咲かせ、実が生きることを信じて訓練を続けた。そして、小・中学校はエレベーターのある普通校に通った。悪戦苦闘の9年間だったが、将来への目標と希望を見つけた、かけがえのない時間だった。

その目標とは社会に出て働くことだ。車椅子の私は、設備の整った会社でなければ無理なので、その分ハードルも上がる。私はそれまで以上に、自立訓練・勉強・パソコン・検定などに意を注いだ。だが、17歳の私に容赦なく訪れた現実は夢を打ち砕いた。就職どころか、障害者職業訓練校でさえ受験することも許されない。それは、身の回りの全ての自立と、一般の交通機関を使って一人で通うことが条件になっているからだ。私は、悔しさと腹立たしさで胸がいっぱいになった。

その後、講演会やシンポジュウムに参加し、私の中で新たな方向性が生じた。それは「私がずっと戦い続けている障害を活かし、その経験と想いを共生社会に向け伝えていこう」ということだ。障害を抱えていると、第一に「生きる努力が必要」です。諦めざるを得ない事や我慢の数は想像がつかないと思います。しかし、「考えていること、やりたいこと、感じること」は皆さんと同じです。仕事も遊びも結婚も自由にしたいと思っています。手当や年金を受け取り、最低限の生活をしていくよりも、自分で働き様々な葛藤の中に身を置いて、人と関わり合いながら社会参加したいと願っています。でも高く厚い壁が遮ります。

そこで、「もし、事故や病気で障害を抱え、介助なしには生活できなくなったら、何をどう考え、どのような社会になって欲しいか」を自分なら自分の家族だったらと考えてみて欲しいのです。その発想こそが、本来の「共生社会」を生み出す原点ではないでしょうか。

また「心のバリアフリー」は、共に行動し共鳴する中で育ちます。私は小・中学校の時、それを体験したので今があります。私が頑張ることで周囲はより一層頑張ります。恵まれた身体に感謝し、心に余裕が生まれ、お互いに改善点を考えます。協力し合って実行し、新たな力が生まれ、信頼と絆の輪が広がります。だから私は、職場にも「ノーマライゼーション社会」の導入を提案したいです。なぜなら、人間の本質的な優しさや、理解することで解決していける問題もたくさんあるからです。権利や義務だけを主張しても、本当に良い社会にはならないと思います。決して、どちらかが重い荷物を背負うのではなく、お互いの能力を上手く生かし、必要とし合い、共に働ける社会になって欲しいと願います。

だから、皆さんで未来の種を蒔いて欲しい。希望の花が咲くよう、夢に続く道を作って欲しい。障害を抱えていても将来を目指して生きられるよう。「命にありがとう」と心から思えるように。そんな国になることを信じて、私は活動を続けます。その夢に届くまで!!

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