「ごめんね〜余計なお節介だけど…いいかな?あなたきっと…」
世にいう…信念無しの就職内定者。やる気よりも内定先が欲しくて、欲しくて…ただそれだけで頑張った就職活動。運よく内定をもらった不動産会社で働き始めて22歳の春。
きっとまだまだ「働く」とは何かさえ理解もせずに、とにかく言われたことをしていました。それが何になるのか?どうなるのか?意味があるのか?など考える余裕すらない中で、必死に仕事をしていました。「人の為に働きたい!」という想いはありつつも、している仕事内容は、なんだか「人を困らせている」感覚もあり、特に不動産営業という仕事柄…飛び込みや電話など、どうしても断られることが多く、それも嫌な顔をされることも多く…「あっまた困らせた」と思うようになっていた。ほんと今思えば、甘い考えだったと反省しています。
仕事観さえ分からなくなり社会の洗礼に、信念の無い私は堪えられなくなってき、心の中では、「これは私がやりたいことではない」という勝手な思い込みと「もう辞めようかな〜」という逃げる想いが出ていた頃、やっと見つけたお客さんに巡り合った。そのお客さんは家族で、お母さんと子ども2人で訪れて来ました。
上司と一緒に対応したりしながらも未熟な私は、そのお客さんの奥さんを対応することはなく、そのお客さんの子どもを相手することしかできませんでした。しかし元々子ども好きだった私は、その子どもたちとの時間は楽しく、とても救いであり、嬉しい時間でありました。上司が色々と説明している間、とにかく子ども達と一緒にいました。
数日後、そのお客さんは私たちの会社の不動産を購入となり…上司抜きで私とそのお客さんのお母さんと最後の契約の時にこういう話をしました。
「矢野さん、私がなぜあなたの会社で買おうと決めたか分かる?」
「いや、分かりません」
「きっと担当にあなたがいなかったら買ってないよ」
「え?」
「だいたい不動産なんてどこも一緒。価格も説明も。だから説明を聞いてもピンと来てなかったけど、矢野さんが子どもをしっかりと見てくれたおかげで、じっくり説明も聞けたし、なんだか嬉しくて…それで決めたの!」
「最初に来られた、あの時ですか?」
「そう、あの時。私の子ども達は人見知りで…あんなにすぐに打ち溶けるなんて見た事なかったし、子どもたちもなんだか楽しそうだったし…矢野さんのおかげ。あれがなかったら絶対買ってないよ。あはは」
思いもよらない言葉が返ってきた。そして続けてこう言われました。
「ごめんね〜余計なお節介だけど…いいかな?あなたきっと…子ども好きでしょ?きっとそっちの仕事の方が似合っているし、やった方がいいよ!!営業は向いてないよ〜辞めたいでしょ?辞めて目指したら?子ども関係の仕事!」
完全に私の心を見透かされてしまいました。
しかしこのお客さんからのお節介の一言こそ、私の気持ちでもあり…やりたい仕事だったことは間違いありませんでした。
それから私は自分の仕事ややりたいことを考えだし、このお客さんに言われた道を選ぶことになりました。そもそも「人の為に働きたい!」という想いこそ、はっきりしていなかったのです。すべての仕事が結果人の為になっていますし、そんな仕事は沢山ある。辞めてしまいましたが不動産の仕事も、住む家を売ることと結果人の為になっていました。
そう…「人の為に」。その人が誰なのか??
それをお客さんの一言によりはっきりしました。そう私にとってそれは「子ども」でした。「子どもたちの為に働きたい!」という信念が芽生え、私はそれからその道へ、子どもの為にできる仕事を目指すようになり、現在は多くの子どもたちの為に日々仕事をしています。
この心を見透かされた余計なお節介が、今の私の人生と仕事を導いてくれました。