【 努力賞 】
【テーマ:私がやってみたい仕事・働き方】
私にしか出来ない社会貢献を目指して
福島県 矢部友佳子 32歳

私の肩書は、「ピアニスト」であり、学習塾とピアノ教室を経営する「塾講師」「ピアノ講師」である。現在クラシックピアニストとして演奏活動をしながら、自営業を営んでいる。

私は音大に行きたかったが家族の反対があり、教育大学でピアノを学んだ。教員免許取得へ向け単位を取りながら、学内外で演奏経験をたくさん積み、放課後は家庭教師のバイトをした。そして幸いにも、演奏活動に挫折することもなく4年間を過ごし、家庭教師としても上々の評価を得て大学を卒業した。

大学を卒業して一年後の夏、私は地元へ戻り、学習塾とピアノ教室を開きときどき演奏活動も行う、という現在の生活スタイルを確立させた。学生時代の経験から教える仕事は向いていると思ったし、ピアノも続けていこうと思った。演奏活動を行うため、自営という形を選択した。塾は個別指導、ピアノも個人レッスンのため、毎日幼稚園児から大人の方まで実に様々な人と一対一で顔を合わせる。やはり、向いていたのだと思う、もう10年近くこの生活を続けているが、現在のところ全く飽きることなくやっている。

さて、私は自分自身が演奏活動をしていて思うところがある。都市部から離れた地方には、クラシック音楽があまり根付いてないということである。即効性のある解決策があるとは思えないが、小中学生にもっと興味を持ってもらうことがこの問題にとって有効なのではないかと考えている。

そこで私は、いつか音楽を取り入れた授業を塾で展開したいと思っている。大手塾では不可能だろうし、ピアニストが経営する塾ならではの授業があってもいいのではないかな、と思うときがある。イメージとしては、学校でいうところの総合学習のようなものだろうか。

例えば塾の社会の授業の中で、クラシックの作曲家を取り上げる。そこから作曲家の出身国、文化や地理を学び、当時の日本との関わりまで言及する。そしてその作曲家の曲を聞かせる。時には私自らピアノの生演奏をする。

私自身、ステージに立つまでには膨大な時間を費やしてピアノと楽曲と向き合う。練習しながらその曲や作曲家について調べることも欠かせない作業であり、追究すればする程面白い。その面白さを塾に来てくれている生徒たちに伝えることが出来たらいいのにと思っていた。

ベートーベンの生きていた時代、日本では「鬼平犯科帳」で有名な「鬼平」こと長谷川平蔵宣以が活躍していたのだが、ジャジャジャジャーンのべートーベンと鬼平犯科帳が同時代に存在していたと考えると、なんとも妙な印象を受けないだろうか。

ピアノのレッスンでは、実際にこのような小ネタを織り交ぜている。作曲家について学ぶときは生徒と世界地図で国探しをし、その国について話を聞かせてあげている。幼い子供たちほど、遠い知らない国に想いを馳せ、想像を巡らせる。ピアノを学ぶことは芸術に触れる時間であり多文化に触れる恰好の機会でもある。

しかし、塾にだけ来ている生徒の大半はクラシック音楽に触れることも多くはないし、縁遠いと言ってもいいだろう。クラシック音楽がそう難しいものではないのだと彼らに体感してもらえたら、もっと視野も広がるのではないかと思う。

個別指導のスタイルである以上、また、生徒によって受講回数・受講科目が異なる条件下のもと、なかなか難しい企画ではある。もちろんみんな、成績アップが一番の目的で通塾しているだろう。

しかしながら、テストや受験のためだけの学習とは一味違う、おそらくどこの塾でも成されていない試みを、いつか実現できるといいなと思っている。そしてその試みがクラシック音楽を身近に感じるきっかけとなり地元のクラシック音楽の普及に繋がっていけば、ピアニスト・塾講師としての私の社会貢献が叶うものと信じている。

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