【 努力賞 】
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私がやってみたい仕事・働き方
日本大学商学部 王司陽 27歳

「働くってなんだろう」6年前にこの問題を解けないまま、私は中国の専門学校を卒業した。積極的に就職活動を行っていた周囲の人たちと比べ、自分は迷ってしまった。「このまま自分がやりたいことを知らず、ただ社会の流れに乗って、就職可能な限りの仕事に就いて、夢も分からずに凡庸な一生を過ごしていくのはいいのだろうか」。この疑問を抱いて、私は日本へ留学することを決断した。

最初日本に来た時、周りの物事に対する好奇心もあり、不安もあった。最もびっくりしたのは、社会における共通の価値観が深くこの国に浸透していることだ。日本では財布を落としても警察署に届けてくれる人がいる。日本人は地震が起こった時でも会計してから店を出る。日本語学校の先生は毎朝元気に挨拶してくれる。ここにいる人たちは社会に対して強い責任感を持ちながら生活している、と本当に感心した。

日本語学校で2年間勉強してから、私は日本の大学に進学した。昔周りが全員外国人であった状況と違い、今度は日本人の若者と一緒に勉強することになった。「日本人の友達ができるかな」と心配していたが、意外とみんなは優しく接してくれたのだ。最初によく友達に聞かれるのは「中国にいる中国人は日本人のことが嫌いですか?」という質問だった。なぜこのような質問があるかを考えてみると、やはり中国人に対する印象がマスコミに報道された反日デモに限られたからではないだろうか。また、「じゃあ、実際中国人は大体どのような人ですか?」と聞かれると、私はなかなか答えられなかった。「そうだね、中国人はどのような人かな」

近年中国は驚異的な経済成長により、世界的な注目を集めている。特に2010年の国内総生産が日本を上回り、世界第2位の経済大国になったことが大きいだろう。しかしながら、経済の面で大きな成果を挙げる一方で、中国社会における精神的・文化的側面の進歩は経済成長を実現するのと同じようには容易なものでない。町の中に勝手にごみを捨てる人がまだ多い。地下鉄を待つ時まだ列を並ばない人が多い。ちなみに、昔日本の警察署に届けてくれた財布は、中国のバスに乗っていた時に取られてしまった。一時、功利主義、拝金主義、機会主義の風潮が中国で横行し、いろんな社会問題も頻発した。これほどの高速成長に直面するに際し、中国人のメンタリティーは多少準備不足のように見える。1949年に建国してから、「文化大革命」による束縛、「改革開放」に伴う転換、インターネット社会による衝撃・・・中国人の価値観は、ほんの65年の間に、史上最短の変化周期を経験したかもしれない。この民族の国民性は多様化・複雑化されたものになり、一言で解説できなくなった。

今年になってから中国の経済成長が鈍化に転じた。だが、その反面、教育改革を求める声や価値観の歪みに対する批判の声も中国で盛んである。人類の歴史を見ると、豊かな物質生活は思想の解放を育む前提なのだ。そしてこの思想こそが社会をより一層発展させる鍵となる。GDPが世界1位だろうと2位だろうと中国は発展途上国のままで変わらない。ここから如何にプラスな社会的価値観を構築するか、ということこそ社会発展の交差点に立った中国が先進国の仲間に入れるかどうかを決める重要な一歩なのだろうと思う。

中国は歴史において農業社会の時期がほとんどだ。中国人が使い慣れたのは武器ではなく、生命を育てる耕具であった。この民族のDNAに刻まれたのは、闘争を好む精神ではなく、数千年に渡って儒家思想に教えられた「温良恭倹」のはずだ。私はこのことを世界中の人々に知ってもらいたい。でもその前にまず、中国人が自分自身の力で伝統文化に宿る輝く一面を思い出すべきだろう。これが私のやってみたい仕事であり、一生をかけて尽くすことのできる事業である。今私は既にこうして答えを見つけ出した。

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