【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場から学んだこと】
誰でもできる仕事とは
島根県 佐藤敦子 22歳

この春、事務のデスクから社会人としての第一歩を踏み出した。特に何の資格を有している訳でもない平々凡々な私は、日本中に何人いるとも知れない事務員のうちの一人になった。事務はただ机上の仕事を淡々とこなしていくだけだと、学生時代は考えていた。しかしそのイメージは、4月に行われた1ヶ月に渡る研修を受けたことから変化を始めた。

当社の研修では、多くの社員から働く上での心構えを聴くことができる。その中で「事務員は現場で仕事を行っている社員のサポートも仕事のうち」ということを複数回聴く機会があった。この段階で当社における事務員のあり方を学んだ訳だが、そうは言っても研修の段階である。実際に仕事に取り組んでいない私には、実感を持つことが難しかったというのが本音だ。しかしこの言葉はモヤモヤと自分の中に残り続け、心境に変化を起こすきっかけとなった。

研修を終え、配属されたのは本社だった。事業所を多く抱える中で、本社は事業所の管理部門としての役割が強い。前述したような「現場に出ている社員」もいないため、配属後も「社員のサポートをする役割」という言葉に首を傾げることをせずにはいられなかった。そんな中、想像していた以上に多くの社員と接する機会が多いことに気付く。机上の仕事をこなすだけではなく、部署間を行き来することも大切な仕事のうちなのである。接する機会が多いと自然と会話も増え、相手の様子の違いに気が付くようになった。ある日、マスクをしている社員に言葉をかけた。「風邪ですか?お大事になさってください」と。この言葉が自然に出た時、ハッとした。「社員のサポート」は、何も現場の社員のことだけを言っている訳ではないのではないか。当社で働いている全ての社員を敬い、大切にすることも事務員の仕事であり、平凡な私にも出来ることではないか。このように考えることができた時、自分の中にあったモヤモヤとしたものが晴れ、研修中に何度となく聴いた言葉を飲み込む事ができたように思えた。

「本社は事業所のサポートセンター」と、ある先輩は言った。本社の人間は、本社内の社員だけではなく、事業所の社員のことも考えなければならないという意味にとれる。一年目にそのような役割を持つ本社に配属されたことで、他人のことを考える力が育まれるだろう。多くの人を気遣うことの必要性に自然と気が付く環境に置かれているのだから。また、事業所に異動したとしても、根底にある考え方は共通である。「他人を気遣う」。このことを忘れなければどこに行っても大丈夫だと確信している。

社会人になり、一日一日が飛ぶように過ぎていく。一年などあっという間に過ぎるだろう。出来ることが増えつつ、新たに学ぶことも沢山あるのだろう。そして一年後には入社してきた後輩に、この考え方を実体験を交えて伝えていくことが仕事の一つとなりそうだ。

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