【 努力賞 】
【テーマ:仕事・職場から学んだこと】
小さな先生
神奈川県 久田健 20歳

いつも、うつむいて歩いていた。自分に自信を持てなかったのだ。この仕事に出会うまでは―。

遠方から小さい黒い点が、すごい勢いで私の方に向かって来る。私の担当する中学三年の生徒だ。全身から嬉しさがにじみ出て、くしゃくしゃの笑顔だ。
「先生、僕、全教科90点以上とったよ!!」
「良く頑張ったな、えらい!!」
先生らしく冷静さを装うが、私も心の中でガッツポーズをしていた。塾の講師のアルバイトを始めて三か月。自分が以前お世話になって個別方式の塾で数学と理科を教えている。生徒は自分に合った先生を授業を通して何度も試してから決める。お見合い結婚と言えばわかりやすい。私も中学三年で兄のような素敵な先生と出会い、努力し、目標の高校に合格できた。いつか恩返しをしたかった。

現在七人の男子中学生を担当している。学年も全て違う。性格を見極め、生徒一人一人に合ったカリキュラムを作成するのが難しい。時間もかかり苦労している。しかし、私の熱意は伝わるようで、それぞれが学校の試験で結果をだしてきた。素直に嬉しく思う。生徒達もわかると嬉しいし、次はもっと良い点を取りたいと意欲が出てくる。だからまた努力する。よい循環が出来つつある。サッカーや学校の話で授業が脱線する事も多々ある。時には友達や親に話せないことも信頼してくれたのか話してくれる。昔の自分と重ね合わせて懐かしく思っている。そして日に日に塾の講師の仕事にやりがいを感じている。

塾に入っていれば成績が上がると勘違いしている生徒や父兄の方がいらっしゃる。私達は合格という目標に向かって一緒に努力するが、本人が勉強しなければ何も生まれない。
「努力すれば結果は必ずついてくるよ」
自分が実感した事を生徒に伝えているが同時に自分の学業も疎かにできない。以前より真剣に大学の授業に取り組んでいる自分がいる。頼られている喜び、七人の生徒の事が頭に住みついて心配とワクワク感がある。
私はいつの間にか、しっかり前を向いて歩いている。不思議なものだ。生徒達から力をもらった気がする。

人の為だからこそ頑張れる。責任を感じ、精一杯の力を発揮しようとする。仕事を通じて学んだ事。そして働いてお金を頂くという事は大変な事なんだ。親のありがたみを改めて知った。そして感謝した。

受験まであと半年。最高の笑顔を勝ち取る為、生徒と一緒に頑張っていきたい。

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