【 努力賞 】
【テーマ:私がやってみたい仕事・働き方】
「恥ずかしい」職業
岐阜県 綾原花 16歳

私の父は、かれこれ十年以上の長い間パチンコ屋で働いています。どうしてか父の職業がパチンコ屋の店員ということを私は恥ずかしく感じていました。

小学校や中学校で必ず一度は授業で扱われる、身近な人の職業について。僕のお父さんは消防員です。私のお母さんは美容師です。他にも警察官や銀行員など具体的な多くの職業があげられるなかで、私は父の職業を接客業とごまかしたように言ったのを覚えています。

あれは、中学二年生の夏です。私の学校では職場体験という機会があり、私はコンビニ店員の体験を二日間させていただくことになりました。今日で終わりという二日目のお昼に、父が私の様子を見に来たのです。これにはびっくりしました。父は運動会や授業参観など、行事にはあまり顔を出さない人だからです。

父が来店し、少したった頃にオーナーが「今あそこにいるお客さん、頻繁に来てくださる人だよ」と言って笑顔で私に父を紹介したのです。もちろん、オーナーは私がその頻繁に来る客の娘だとは思ってもみなかったのでしょう。「いつもありがとうございます」そう言いながらオーナーは父に駆け寄りました。私はどうしていいかわからず、後をついていきました。「この時期は職業体験かなんだかで中学生の子が来てくれているんですよ」オーナーの言葉に、私の父は「ああ。はい。聞いていますよ、娘から」そう言って私の方を見ながら言いました。オーナーは案の定知らなかったようで驚いていました。

父が店を去り、休憩のため店の奥に私と、他に研修に来ていた二人が集められました。今日でもう終わりだから、といってオーナーは働くことについて教えてくれました。その際に、「みんなの親御さんは何をされている方なの?」と聞かれたのです。私は、またかと思いました。みんなが淡々と答えるなか、私は「パチンコ屋で・・・。恥ずかしいですけど」と言うと、オーナーは私に「それは違う」と、「俺もあなたのお父さんの店に行くことあるけど、お父さんは頑張ってるよ。あなたたちの為に汗水流してるんだから」そう言いました。

父が帰ってくるのはほとんど深夜二時ごろ。疲れて帰ってきているはずなのに、休みの日には私と小さな弟に付き合ってでかけてくれることもあります。オーナーの話を聞いてから段々と私の中で父に対する思いが変わっていきました。私たち家族のために働いてくれている父に、ひどく失礼な考えを持っていたのではないか。働いている父を恥ずかしいと思っていた自分が恥ずかしい。そう思いました。

「恥ずかしい」職業なんて一つもないのだと、私は知りました。きっと誰よりも充実した職業体験だったと思います。

私もいつかお父さんのように、仕事に対して努力を惜しまない人になりたい。私がお父さんを「かっこいい」と思っているように、私も自分の子供にそう思われたい。お父さん、いつも本当にありがとう。

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