【 佳 作 】

【テーマ:私がやってみたい仕事・働き方】
日本から世界へ 世界で活躍する教師に
福岡教育大学 夫馬ひな乃 22歳

私は、今机に向かって勉強をしている。それは、これから始まる社会人としての人生における第一関門を突破するためだ。そう、私の夢は小学校の教師として働くことである。

大学1年生の時に遊学生として3週間滞在した、カンボジアでの経験を通して私は教師になりたいと強く思うになった。私は、将来教師を志す者として、カンボジアの小学校や孤児院等の教育現場を訪問し、子どもたちと将来の夢を語り合うことをその遊学のテーマとした。

カンボジアでは、1970年代後半に起きたポル・ポト政権によるクメールルージュにより、罪のない200万人もの国民たちが無差別に殺戮された歴史がある。そのクメールルージュの最初の犠牲者となったのが、医師や教師などの知識人であった。知識人と分かっただけで殺されたのである。内戦は、教育制度の崩壊だけではく、教壇に立ち子どもたちを教え導く教師さえも排除してしまった。そのような時代背景から、近年日本企業や学生団体の援助により多くの学校が建設されているという。そして、実際に現地の学校現場を訪問してみると、日本の学校と同じように人数分の机と椅子が並べられた教室、たくさんの本がある図書館、また校庭には日本と同じようにブランコや鉄棒等の遊具があった。つまり、学ぶための環境はしっかりと整っていたのだ。

しかし、一方で私は現地で衝撃の光景を目にした。環境が整っていて、教室には学びたいという気持ちを持った子どもたちが多く座っているにも関わらず、教壇には教師がいなかったのである。現地で教育学を学ぶ友人に尋ねると、給与等の待遇の悪さから教師は授業をせず、校庭で教師同士雑談をしていたり、教室内でその日の授業で使用する教材を販売し、その教材を買えない子どもには授業を受けさせないという。つまり、貧困により学ぶ機会を奪われている子どもが多くいるのだ。また、教師自身もどのように教えるべきか分からないため授業を行わない場合もあるようだ。一方で、子どもたちと言葉は通じないけれども遊びや、身振り手振り、絵を介して将来の夢について語り合ったときには、彼らは夢にときめいていた。日本の子どもと同じように、シェフやお嫁さん、サッカー選手、お医者さん等たくさんの夢と笑顔で溢れていたのである。しかし、彼らがそれぞれの将来の夢を叶えるためには、ある程度教育を受けて知識や技能を身につけることが必要である。

このカンボジアで目の当たりにした教育現場の現状から、教師は子どもの将来をも左右させるような責任重大な職業であること、人の人生において教育を受けるということは将来豊かな幸せな人生を送るために重要であることを実感した。そのような実体験を踏まえて、私は教師として働いてみたいと強く思うようになった。また、日本の教育現場で経験を積み、そこで学んだことをカンボジアのような開発途上国の教育の発展に活かせるように、日本の教育を輸入できるような国際的な実践的な指導力を持った教師になることが、新たな私の夢となった。もちろん、教師として子どもたちと積極的に関わり、対等にそして真正面から向き合い、一人ひとりを理解していきたい。また、学級の一人ひとりが笑顔で堂々と将来の自らの夢を語り合い、周りが共感しあえるような和やかな雰囲気の学級を作っていくことも大切にしていく。具体的には、机上の学びだけではなく、実際に興味のある職業に従事する方のお話を聞く機会や、実際にその職業の就労体験を行うなど、子どもたちが自分の将来に真剣に向き合えるようなキャリア教育を積極的に取り入れていく。

カンボジアで目の当たりにした教育現場の現実と子どもたちとの関わりを通して、私は日本だけではなく世界で活躍できるような教師として働きたいと強く思うようになった。それらの夢を叶えるために私は今日も机に向かう。夢でときめき、笑顔が輝く未来の子どもたちのために。

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