公益財団法人 日本生産性本部会長賞
この国には、「夫が外で働き、妻が家庭を守る」という伝統的な考え方がある。昔は「女性が働く」といえば家の中で炊事・洗濯などの家事が大半を占めていた。また育児も女性の仕事という考え方が強かった。男性が自分の妻のことを「家内」と呼んでいたことが、その象徴である。女性が社会に出て働く、つまり女性の社会進出が進んでいる現在もなお、この考え方は少なからず残っているのではないかと思う。
そもそも女性が外で働くようになったのはたった100年くらい前のことである。個人の生活の質を高めることもその理由の一つだが、国の意向も含まれていると思われる。それに伴い、これまで様々な法律が作られてきた。男女の人権を尊重しつつ、能力を十分に発揮できる「男女共同参画社会基本法」や雇用において男女を均等にあつかう「男女雇用機会均等法」などがある。また育児休業、介護休業のとれる法律もできた。
しかし、私はこれらの法律で女性の仕事に関する問題が解決されたとは思ってはいない。なぜなら法律があってもそれを使う人の理解がなければ意味がないからだ。私はまだ高校生で職場というものに縁がないが、身近な働き手として親がいる。両親は共働きで家にいないことが多い。父親は早くに出勤し、夜遅くに帰ってくる。母親も遅く帰ってくることがある。「働く」ということは大変なことなのだといつも思う。しかし、私が気づいたのは家にいるときの母親の忙しさである。外での仕事に加え、家事のほとんどを母親がしている。これが前に述べた伝統的な考え方が残っていると思った理由である。だから学校で友人達と将来の話をすると「結婚するまで働いて、それからは専業主婦になる方がいいよね」となることが多い。
あるとき、テレビを見ていると新婚だという男性タレントがこんなことを言っていた。「家事も育児も手伝うようにしています」
私はそれを聞いて、やはり男性にとってそれらは「手伝う」という認識でしかないのだと思った。さらに驚いたのは、その発音を聞いていた他のタレントたちが、「○○さん、さすがですねぇ!」と口を揃えて称賛したことだ。もし女性が同じことを言ったらどうだろうか。周りの男性たちは、当たり前のこと、と思うのではないかと思う。新婚のタレントの奥さんもテレビの世界で働いている。同じ職業でも女性というだけで家の仕事は「絶対」になる。ここでは、わざわざ制定された法律は適用されないのだろうかと私は思う。
私は、「女性が輝ける働き方」を実現するには、男性の理解と協力が必要だと思う。さらには、男女がお互いを思いやる気持ちが大切だと思う。特に共働きの夫婦は、お互いが同じ条件であることを認識することが大切だ。現在、男性の考え方が少しずつだが、変わってきている。男性が育児休暇をとるという人も徐々に増えている。しかし、他の先進国に比べると、その割合は遠く及ばない。長い歴史の中で根付いてきた日本人の認識はそう簡単には変わらないものかもしれない。しかし、お互いが思い合って、本当の意味で男女が平等に働けるようになり、男性も女性も輝ける日が来ることを実現したい。