【 努力賞 】
【テーマ:世界と日本−海外の仕事から学んだこと】
グローバルな視点で自分を磨こう
大阪府 阿部羅かおる 65歳

それなりに待遇の良い会社で経理のサブ責任者として働いていた頃、英語のできない自分に苛立っていた。海外から医療機器を輸入販売している会社なのに、外国人が来てもまったくコミュニケーションが図れなかった。かといって元々英語が嫌いだったので、自力で勉強する気力も出ないという悪循環。

そこで一念発起して会社を辞め、海外に飛び出すことにした。日本語の通じない世界に行くと自然に英語が身につくのではないかという、英語嫌いの私の苦肉の策だった。

先ず行ったのはアメリカのアラバマ州、そしてそこにある可愛らしいカレッジ。クラス分けテストの結果、外国人向け英語コースの下のクラスに入れられた。意外だったのは、辺鄙な場所なのに日本人が多かったこと。英語漬けではなく日本語漬けで毎日を過ごした。せっかくアメリカに行った甲斐が無い。そこで一か月後、アトランタの名門ジョージア工科大学の外国人向け英語コースに移った。大学の前にあるトラベルロッジで一週間猛勉強をしてクラス分けテストを受けた結果、最上級クラスに入ることができた。同じクラスには企業から派遣された日本人もいたが、コロンビア人が多かった。

三か月後、何とか使えるようになった英語を携えて、憧れの街ニューヨークへ上った。英会話学校に通いながらニューヨークをエンジョイしていた時、日本人駐在員向けのビジネス新聞社から「記者になりませんか」と誘われた。願ってもいないチャンスだった。

仕事は面白かった。現在一部上場企業のトップになっている方々に、次々とインタビューをすることができた。フロリダで開かれた日本企業のコンベンションにも参加をした。全米から集まって来たディーラーで会場は熱気に溢れていた。また、航空会社やホテルとタイアップした旅行企画を主宰し、私もカリブ海の島々に飛んだ。胸が弾んだ。

やがて、その頃ワールドトレードセンターにあった米大手監査法人にスカウトされた。

決算時期になると、大手日本企業現地法人に出かけて監査をした。アメリカの監査は徹底している。クライアントが機嫌を損ねることもあり、プロに徹する辛さを学んだ。

そんな仕事の傍ら、大学の社会人向けコースで会計学を受講した。多くのアメリカ人が仕事の後一生懸命勉強をしている姿を見て、ああ彼らは夢を捨てないのだなと感激した。

従来の経理に加えて英語を身につけたおかげで、帰国後は主として外資系企業で管理職として重要な仕事を任された。面白かった。

今は国内でも楽しみながら英語を学べる環境が整っている。苦手でも最低日常会話、やがてビジネスレベルの英語を身につけることで、未来は大きく拓けてくる。グローバルな視点で自分を磨くことによって、何倍も面白い人生が待っているのだ。

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