【 佳 作 】
私の職業はライター。「好きなことを仕事にできていいね」とよく言われるが、寝食を忘れるほど好きなわけではない。では、なぜライターになったのか。それは、第三者が評価してくれる分野だったからだ。
実は文章を書くことは、むしろ嫌いだった。それでも高校生のときに小論文の模擬テストで全国14位になったり、大学入学後はメールの文章が面白いと友人たちから言われたりと、評価は悪くなかったと思う。コラムニストやエッセイストになればと薦められたことさえある。でも当時はまったく興味がなく、大学卒業後は事務職員になった。
ところが仕事が自分に合わず、5年半で退職。その後は転職を繰り返していた。そんなときにふと目にしたのが、ある懸賞論文だ。「お小遣いが稼げたらラッキー」くらいの軽い気持ちで応募してみると、思いがけず佳作に入賞。しかも、作品が書籍に収録されたのだ。
236編の応募の中から選ばれた、私の文章。書籍に掲載された自分の名前を見ると、顔のにやけが止まらない。バレエの発表会ではいつも脇役で、大学受験に失敗して浪人を経験した私が、初めて大勢の中から上位に選ばれた瞬間だった。
そうか。私は文章が得意だったんだ。
33歳にしてやっと自覚した、自分の適性。これからは文章というフィールドで勝負しようと個人でライターの仕事を始め、5ヵ月後には正社員として採用された。
とはいえ、ライターの道は甘くない。必死で書いた原稿が、真っ赤に添削されることも珍しくなかった。そんな中で励みになったのは、「センスあるから頑張って」という、先輩や上司の言葉。自分が評価されているというのは、一番のモチベーションにつながるものだ。
入社して1年半が経った頃、忘れられない出来事があった。それは、ある医療器具のプロモーションのため、開発者である医師のインタビュー記事を作成したときのこと。でき上がった原稿を先生にお見せしたところ、こんなメールをいただいたのだ。
「非の打ち所のない文章に感服致しました。患者さんやご家族のために必死で取り組んでいる気持ちを的確に表現してくださり、感謝しています。いつか、文章の書き方を指導してください」
さらには、このインタビュー記事を読んだ方からもメッセージをいただいた。
「心を打たれる記事だった。病院のスタッフに回覧している。自分たちも何かしなければと思った」
この案件を通じて、ライターこそが天職だと確信した。私の文章が、人を喜ばせたり感動させたりできる。私の仕事を評価してくれる人が、世の中にたくさんいるのだ。これこそが、仕事の醍醐味ではないだろうか。仕事が好きという気持ちは大切だが、第三者に認められるかどうかも重要だと思う。「好きなことを仕事に」と盲目的になって別の可能性を逃すのは、非常にもったいないことだ。仕事選びに悩んでいる人がいたら、こうアドバイスをしたい。「あなたは今まで、どんなことを評価されてきましたか?」と。
そう言う私はどうだろう。記憶の糸をたどってみると・・・・・・。思い出した。小学校3年生のとき、遠足の作文が"学級だより"に掲載されたのが原点だ!こんな些細なことが天職につながっているとは、自分でもびっくりする。