【 入 選 】

【テーマ:仕事・職場から学んだこと】
仕事・職場から学んだこと
岡山県 藤井通子 77歳

じっと眼を閉じると今迄自分が歩んで来た一本の道が今もずっとずっと広がり続いている。「働くこと」がどんなに素晴らしいことなのか、自分以外の誰かのために少しでも役に立つことがどんなに大きな、大きな喜びと成長をもたらすことか出来るのか、ひたむきに生きる人々の姿に接しあらためて感激の気持ちで一杯になってくる。仕事を通じ私をとりまく多くの人々、多くの子供達から、教えることよりもはるかに沢山のことを、私自身の方が学ばせて頂いたような気がする。

私はいつも「自分に与えられた環境」と「自分に与えられた時間」の中で「今出来ること」を少しずつやっていくことを目標にして来た。大学を卒業後、母として、職業人としてボランティア活動を続け乍ら、再び学びたい気持ちから新幹線にゆられながら上京していた大変に多忙の日々の連続であった。

ふとしたことから新聞配達をしている一人の青年の姿に出会った。厳しい冬の寒さの中、カタカタと自転車を走らせて新聞を配達している青年。家族のために一生懸命働いて学んでいる青年。時間もないのにつかの間の時間も無駄にせず休日は、公園の草むしり、せっせと真面目に働きつづけている青年の姿に接し、私は胸があつくなった。「働くこと」と、「学ぶこと」は両輪のような気がする。きっとこの青年は大きな目標に向かって一歩を、小さな一歩をたえまなく努力しているにちがいない。立派な社会人になること、何か将来に大きな希望をいだかせてくれる姿に、私は心の底から声援を送りたい気持ちで一杯になった。今の私に出来ることはないか、支援することはないか私は考えました。明日を担う子供達、若い人達のために青少年健全育成のための様々な企画をたててみた。そしてそれを自分をとりまく地域社会の中で実践してみようと心に誓った。長い教職生活と仕事・ボランティアから得たものを活かし一歩を踏み出した。文化の乏しい地域から、世界で活躍できる人材育成をするにはどうすれば良いか私は常に地域と中央、地域と世界を結ぶかけ橋となるような仕事をしてみたい、そして小さな窓から広い世界を視、人々のために、平和のために活躍してくれる人を育てたいその思いで私は喜びに一杯になって来た。「みんな仲良し世界は一つ」をテーマに子供達、若い人達と世界各国から集まった留学生との交流事業、世界の教育、子育て、福祉、世界のくらし等、まず留学生との交流学習会講演会を企画した。子供達は目を輝かせ、広い世界に興味を示し、「学びの輪」がどんどん広がっていった。公民館活動の中にも青少年国際理解講座を開いた。私が講師になったり、各国の留学生が講師となったり大変楽しい講座となった。「学ぶことの素晴らしさ」、人々との交流を通じ、人を尊敬し、人と仲良く心を開いて語りあうことの大切さを人々のつながりの中で発見して子供達は日々成長して行った。私は地域の中で小さな窓から世界への窓を開くことの大切さをこれ程強く実感したことはない。地域での基盤造りに全力投球の日々であった。一段落ついた後、この仕事を若い人に委ね、現在は世界各国から学びに来ている留学生との交流支援活動ボランティア活動にも参加している。地域と中央、地域から発信される世界へのつながり、「みんな仲良し世界は一つ」をテーマにはじめた私の初期の活動が形をかえ大きく拡がっていった。

現代は社会構造の著しい変化、その対応の中で人間関係の複雑さ、希薄化、いじめ、不登校等、社会にはかかえきれない程問題が山積みされている。次代を担う若い人達をいかに健全育成していけるか本格的な対応と施策が必要となってくる。

「働くことは素晴らしい宝物」・「新しい発見の日々」・「人々とのあたたかい交流」・そして又、「学びの輪」がどんどんひろがっていくことを学ばせて頂いた。若い人々と共に成長していきたいと思う。

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