一般社団法人 日本勤労青少年団体協議会 名誉会長賞

【テーマ:仕事・職場から学んだこと】
私が仕事から学んだこと
鹿児島県 伊瀬知三郎 85歳

最近のニュースで気になるのは犯罪、それも凶悪犯の増加です。注目しなければならないことは、犯人の多くが無職であることです。人間としてまともに生きていくうえでの大事なことを学び、教えられていれば、そのような悪事に走ることはなかったであろうにと思われてなりません。まさに、「教わらなかった・学ばなかった不幸、教えるべきことを教えなかった罪」ということでありましょう。

働くということは、生きていく上で必要な資を得ることだけが目的ではありません。それ以上に大事なことは、仕事を通して人間としての生き方・人としての道を学び、生きていく喜び、満足感、充実感、生きがいを感ずることができるということです。

「職業選択を誤った」ということを聞くことがありますが、社会的に価値のある仕事である限り、適不適はさほど問題ではないように思います。

中学校長を最期に教員を定年退職した私は、その後、社会福祉のお手伝いをさせていただいて今日に至っていますが、「この仕事は自分に適しているだろうか」と考えたことはありませんでした。ひたすら子どもさんたちとの関わりに生きがいを感じてひた走るうちに、いつしか定年が来てしまったという感じでした。

定年退職後、縁あって、認知症を主とする高齢者福祉施設の事務長兼相談員の仕事を経て、現在は二つの社会福祉法人の役員と、認知症相談窓口事業の相談員を仰せつかっています。「人の上に立とうと思うな。人の役に立とうと思え」というのは私の母の教えですが、後期高齢者の仲間入りをさせていただきながら、人様のお役に立つ仕事をさせていただいていることに感謝しています。

永い教員生活で子供さん方に接し、さらに20数年の社会福祉の仕事から学んだことは次のようなことでした。

@相手を受け入れなさい(受容)

A相手を信じなさい。これは相手から信頼される前提条件でもあります。信頼関係ができて初めて相手から受け容れられるのです。

B相手に対しては、自分自身が不快にならないように、自分自身が心地よくなるように話し、接しなさい。自分にとって心地よい接し方や話し方は、相手をも心地よくし、心を開き心が通じ合うことにつながります。

人間、微笑んで、少し顔を綻ばせただけでも心地よさがこみ上げてくるものです。イエス・キリストは、「人の嫌がる嫌な仕事を微笑みをもってせよ」と教えてくれていますが、私が教員生活、社会福祉の仕事を通して学んだことは「人に接するに微笑みをもってせよ」ということでしょう。その根底にあるのは「真のやさしさ」ということでもあります。

世界は決して平和ではありませんし、人の世も必ずしも平和ではありません。本当のやさしさは、事柄の真偽を峻別できる力の源泉でもあります。毅然とした国のありようや世界の動き、社会のあり方にも関心をよせて、自分の仕事に励みたいものです。仕事から学んだもの、それは何物にも勝る宝物です。「人生は思い出づくり。よい思い出を持つ者は幸せである」と言います。よき思い出は、仕事に精進することによって作られることが多いものであることを付け加えたいと思います。

戻る