【 努 力 賞 】

【テーマ:世界と日本―○○から学んだこと】
チップ文化とは?
東京都 吉川 17歳

チップってなんて煩わしい文化なのだろう。アメリカに来て、最初に違和感を覚えたものだ。ファーストフード店、テイクアウトなら、チップは不要。ただ、ちょっとしたレストランなら社会人、学生関係なく、食後のテーブルに最低、15%のチップを置いていく。納得できずとも『郷には、郷に従え』そんな言葉の元に今日も私は、しわしわの1ドル札を2枚、コップの下に挟んで店を出た。
わたしの気もちを察したかのように、友人が声をかける。

『チップは、ウェイターたちの給料だからね…。あの人たち、基本時給は100〜300円の世界だから』
『なにそれ!?』
私には、まるで理解できない。
『どこの店もそうだよ』
アメリカ人の友達はそうシレッと返す。

どうして、そんなことになっているのか?人件費という言葉がアメリカにはあるのか?じゃあ、その分の利益はどこに消えているのか…。私の頭は、たちまちクエスチョンマークでいっぱいになった。

その晩、ベッドに入って私は、以前日本で専門学校にかよっていたときの中華料理店でのバイトを思い出していた。おいしいまかない付で850円の時給が気に入って決めたホールのバイト。いくら店長のシフト管理がずさんでも、850円まかない付と思えば頑張れた。いくら残業があっても850円まかない付だから頑張れた。そんなバイト。アメリカ、いいや、チップ文化を持つ国のホールスタッフたちはいったいどんなモチベーションで働けるのだろう。チップは、くれない人ももちろんいる。食事やスタッフの態度が悪ければ、払わないのは自然だ。つまり、最低限の支払い義務があると言いつつも、歩合制。考えてみると、厳しい世界だ。私がどんなにミスをしても、よほどの事がない限り1時間850円は保障されたけれど、かれらは違う。

私は、このチップという文化の中に、世界と日本の働くということに対する意識のずれを感じた。実力社会のアメリカと安定・長期雇用の日本。少し、大袈裟だろうか。850円という時給で守られていた私にとって、よい接客をすることは当たり前の事だった。いい給料をもらうから頑張らないといけない。でも、あの日出会ったアメリカ人のウェイターは、頑張らないといい給料がもらえないのだ。私と彼は正反対のモチベーションもとで働いている。どちらが正しいのだろうか。

私の出した答えは、どちらも正しくて、どちらも正しくない、だ。

一生懸命働く人と手を抜く人がしっかり区別され、頑張ったものにはそれなりの給料が支払われるアメリカ。でも、安定した給料が保障されていない危なっかしい仕事環境のアメリカ。いい給料だからこそ、頑張れる!みんなを頑張らせようとする日本。でも、時にもう頑張らなくてもいいかな…と思ったとき案外生きていける、そんな日本。

働くってなんだろう。お金のため、達成感、社会人としての義務…。何のために働くのか、それは千差万別。ただ、働くことに対する意識は、国単位で大きくちがう。

だから、私は、最近『実力社会』そんな言葉が、日本の会社にも輸入されつつあることに少し疑問を抱いている。そもそも、日本人の体質にそんな会社体制は合っているのだろうかと。アメリカはアメリカ、日本は日本。私はなんでも世界に合わせようと中途半端にグローバル化しようとする日本が嫌いだ。どちらも、完璧でない分、日本には日本の良さがある。それに、私たち若者、そして大人たちは、気づいているのだろうか。

4年間の留学が終わって、日本に帰ったとき、
『お客さん!チップ忘れていますよ』
そんなことを言われそうな気がしてちょっとヒヤッとする。

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