【 努 力 賞 】

【テーマ:仕事から学んだこと】
パン工房
大阪府 赤井 克也 71歳

私は電気器具を製造していた会社を定年退職し、最近ボランティア活動を始めた。

精神障がい者が20人ぐらい働いているパン工房へ、月2回ぐらい手伝いに行く。ひきこもりだった人が多いので外部の空気を入れるのが目的である。聞いたり話しかけたりするように心がけている。

パンの種類を聞いた。

黒ゴマがのっているパンが粒あんで、ケシの実がのっているのがこしあんだという。見分けの付かないのがメロンパンとクリームの入ったクリームメロンパンである。見分けるにはデジタル量りで重さを見るのだと教えてくれた。全部で20種類ぐらいある。

専用の言葉も教えてくれた。

「ばんじゅう」とは、パンを入れる箱のことであって、漢字で番重と書き、順番に重ねて置くからだと理由まで言った。

「シーラーする」パンをビニール袋に入れて袋の口を熱で圧着することである。この作業が難しい。熱を加えすぎるとちぎれてしまい、熱が少ないと口が開いてしまう。コツは熱いうちは動かさないで、2秒ほど冷ませてから外すのだと何度も見せてくれた。私が失敗したのは黙ってやり直してくれる。

「小づちを打つ」これは小づちの形をした器械でパンの袋に消費期限のシールを貼ることである。パンにより日付が違うので打つ度に丁寧に注意をしてくれた。

仕事は一人ですることは少なく、同僚に協力してもらわなくてはならない。そんなとき、この工房では、次のように言っている。

「ばんじゅう拭いてもらっていいですか」

「シーラーしてもらっていいですか」

誰もが「いいですか」を付け加えるのである。私は「してください」で良いと思う。しかし、障がいがあるため体調の悪いときもあるので、尋ねるような言い方をしているのだ。

洗い場の仕事についたとき、

「網あらってもらっていいですか」

「食器洗ってもらっていいですか」と言われると、自分の意志が尊重されているようで、良い気持ちになり「分かりました」と返事をする。すると「お願いします」と大きな声で応えてくれる。

誰かが「パン配達に行ってきます」と言えば「行ってらっしゃい」と応え、「帰ってきました」と言えば「お帰りなさい」と近くの人たちが大きな声をだす。これだけで職場の雰囲気が明るくなる。

人の呼び方で気がついたことがある。私を呼ぶときは名札を見て「赤井さん」と名前を呼んでくれるこれは親しみがわく。たまに、「ボランティアさん」と呼ばれることがあるが、他人を呼んでいるような気がして良い気持ちはしない。私は現役のとき「アルバイトさん」とか「パートさん」と呼んでいた。名前を呼んでおけばよかったと反省している。

この工房で働いて学んだことは、パン作りの工程はもちろんのことだが、精神障がい者はまじめで優しく、そして他人によく気を遣う人たちだということだ。

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