【 努 力 賞 】

【テーマ:○○年後の自分に宛てた手紙】
1年後の私へ
東京都 ジュ・リエ・ット 62歳

3年前まで、ハローワークの非常勤職員として働いていた私でしたが、パーキンソン病という持病の症状がだんだんひどくなってきていました。加えて夫が肺がんとの宣告を受け、ここは私が外科手術を受け夫を支えなければ、なんて思ったのがそもそもの思いあがりでした。手術したことにより、症状は更に悪化し、職場復帰は叶わず、3月末に辞めざるを得なくなってしまいました。

手術前、医師と相談し十分納得してうけた手術でした。しかし終わってみると、心の底から舌打ちしたくなるほど身体は不調になり、今まで以上に夫の世話になってしまうようになってしまいました。夫は仕事をやめて家にいたので、私の面倒を見てくれました。掃除、洗濯、食事の支度、買い物までのいっさいをしてくれました。夫は病気の妻のために生きようと思っていた人生を、定年を前にがんで倒れてしまう。妻は難病のパーキンソン病を、手術によって回復し、夫の面倒を見ようと思ったら更に悪い結果になってしまった。どこかで聞いたことのある話…。

ある所に貧しい夫婦がいました、相手のためのクリスマスプレゼントを買うお金が無くて、大切な物を手放すことに、妻は美しい髪を売って、夫の懐中時計の鎖を買い、夫は妻のために懐中時計を売って、髪をすく櫛を買う、という話しを思い出しました。確かオー・ヘンリーの『賢者の贈り物』です。

何回か繰り返された入退院の結果、私の体に変化が現れ始めました。ほんの少しづつではあるけれども、自分の事が自分で出来るようになってきました。病気は進行性の難病ではあるが症状が落ち着いて来ているのてす。私達に残された人生がどのくらいあるのかわからないけれど、楽しく生きなければ人生ではない、どうせ生きて行くのなら楽しく笑いながらの方がいいに決まっている。それからというもの、私達は楽しい生活を心がけます。2人で分かち合う喜びは、2人で語る楽しみは、残されている未来のことである。夫は現在町会の総務部長を引き受け、充実した生活を送っています。私はピア相談員になるために勉強を始めました。それで就職が出来るのかと言えばそういうわけには行かないと思うのですが、ボランティアで良いから、誰かのお役に立ちたい、必要な存在になりたいのです。

1年後立派なピア相談員になっていますように、そして夫も元気で町会の仕事を続けていられますようにと心から願って、この手紙を書いています。

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