【 努 力 賞 】
32歳の頃、私は国家資格を取得してコンサルタント会社に転職しました。当時の私は、コンサルタントの仕事は頭で考えてするものだと確信していました。その頃の私は一切現場を無視して、資格で得た頭でっかちの理論や知識を振りかざして、ひとり得意満面になっていました。
そんなある日のことでした。クライアントの方から突然言われたことがあります。
「仕事は常に相手がある。君はいままで相手のことを考えて仕事をしたことがあるのか?」
その言葉に私はハンマーで頭を殴られたような衝撃が走りました。私はその時、ふと気が付いたのです。
「コンサルタントの仕事はすべて現場ありきである。現場こそがすべてではないか」と。
実際、理論で解決できることは机上の空論になりがちで、自ずと限界があります。まず、現場に行って人の話を聞き、ニーズを吸い上げて、それを元に問題解決策や新たな提案をする。至極当たり前のことですがまだ若く、経験も豊富でなかった私には十分に理解できませんでした。一般的にコンサルタントを頼む会社は悪い所ばかりと思われがちですが、伸ばせば強みになる場合もあるのです。
それ以降、私は自分の意見の押し付けではなく、人の話をよく聞くようになりました。
「今、こういうことで困っている」「わが社にはこういういい所があるが、これはもっと伸ばしたい。何かいい方法はないか?」「こういう事業には将来性があるか?」等々。
人の話を聞くことで、今まで見えなかった何かが急に見えてきたことも多々あります。
しかし、じつはこれはコンサルタントという職業だけに当て嵌まるのではなく、どんな職業や仕事にも共通したことだと思います。ひとりでできる仕事は一つとしてなく、すべては相手がいるのです。
私が学んだ「仕事とは単に机でするものではない。まず、現場に行って汗を流す。相手にニーズを十分知った上で、知恵を絞る」は、仕事をする者の鉄則です。
それ以降、私は現場を中心にしたコンサルティング活動ができるようになりました。
今、私はコンサルタントとして独立していますが、当時の経験が今の仕事にも確実に生かされていると感じています。
どんな職種に就こうとも現場至上主義を貫かない限り、仕事はどこか独りよがりなものになり、相手から感謝されるようなよい仕事はできないのです。
これから社会に出る若い方には是非、相手の身になって仕事をして、職務を全うして欲しいと切に願います。現場で得た経験はとても貴重です。そしてそれは、たとえ何年立とうともけっして色褪せることはありません。それどころか、現場で培った経験はあなただけの貴重な財産にもなることをどうか忘れないでください。