【 努 力 賞 】

【テーマ:仕事から学んだこと】
アンパンマンを目指して
兵庫県 節分草 51歳

市立中学校の生徒指導相談員として勤めて8年になる。私は、今も非正規の職員である。
残念ながら独身時代を含め、今日に至るまで正規の職員になったことはない。正確には大学を出たばかりの最初の採用時は、アパレル会社での正規採用だったのだが・・・。事前研修の最後のダンスパーティで専務に抱きつかれ、驚いた私は採用を辞退した。

その後は、国立大学医学部の医局秘書や卒業大学研究室の秘書、日本語学校での日本語教師など、どれも結婚前のパートとしての勤務だった。結婚後は3人の子育てに専念し専業主婦としての毎日であったが、子供の教育資金を得るため再就職を余儀なくされた。40歳を過ぎてからの再就職には厳しさを味わったが、県の就業支援センターの指導のおかげで、自信を取り戻すことができた。ちょうど募集していた現職への挑戦がかない、採用していただくことができた。私でも家庭以外に行き先と居場所があるのだと思うととても嬉しかった。ただ勤務校が大規模校で、しかも困難校だったことから、一日の勤務を終えるとそのままマッサージ店に飛び込むという毎日が続いた。 勤務の内容は、生徒指導上問題を抱えている生徒へのきめ細かい対応と、不登校生徒が教室復帰できるよう寄り添い支援することを中心に、学校の環境を整え、先生方の補助業務をこなすといった、いわゆる正規の先生方の隙間を適切に埋められるかどうかといったことが重要だった。しかし当初、熱心になればなるほど対抗感情が生まれ、一番避けなければならない正規の先生方ともめてしまうことが多々あった。たとえ良い結果が出ても、チームとして働く上で、その頃の私は未熟だった。

一方、当該生徒には、情熱と感性だけでも十分伝わり、変化を促すことができたのだが、一緒に働く正規の先生方には、前例がないこととしてなかなか理解を得ることができなかった。家族と一緒に居るよりも長い時間一緒に過ごす職場の方達と、このままの関係ではまずいと思った私は、高校時代の恩師のアドバイスに従い、教科以外の専門性を高めるため、教育カウンセリングの学習を始めた。知識と技術の奥深さを知るに付け、自分を振り返ることができるようになり、なぜ職場の先生方に理解されなかったかがわかるようになった。そうして、専門的な理論をしっかりと学び身につけることで、周りの先生方や保護者の納得と共感を得ることで、協力を得ることができるようになった。職場で大切とされる報連相にしても、手短に適切に感じよく行うためには、やはりこちらにも専門性が確立していないと難しいのではないかと思う。非正規という立場ではなおさら正規の職員から信頼されるための努力が欠かせないと信じて努力を続けている。現在、中級教育カウンセラーの資格を有し、更に上級を目指して学習を続けている。『学び続ける者だけが教える資格がある』という教えを胸に、各地で催されている講習会で、熱心な先生方と出会い交流できることを楽しみにしている。学んだことをすぐに生徒への支援に活かすことができ、その結果生徒の変化が著しいことに喜びを感じている。同時に職場での居心地の良さは、これまでの学習による私自身のソーシャルスキルがアップしたことによるものと確信している。仕事を続ける中で努力を続けたからだと思うと、とても嬉しい。困難な生徒たちの問題に今日も立ち向かいながら、決して独りよがりにならず理論に基づいてチームとして取り組めていることに誇りを覚えている。今となっては自身の子供の教育資金を得ることに留まらず、仕事を通じて人として向上でき社会に貢献できていることを幸せに思う。今後も生徒に寄り添い、アンパンマンのように愛と勇気を持って、謙虚に明るく仕事に励むことで、充実した人生を歩みたい。

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