【 努 力 賞 】

【テーマ:仕事から学んだこと】
組織の中で働くということ
埼玉県 はつらつ 38歳

大学を卒業して、初めて会社勤めをした時、それまでの学校社会との違いは歴然で、社会に放り出されたというショックはとても大きかった。

会社組織の中で生きていくということは、先生対生徒という分かり易い人間関係はあまり存在せず、複雑に絡み合うそれぞれの立場の中に、自分が入っていくということである。直属の上司がいて、その上司と対立する直属ではない上司がいて、女性の先輩社員がいて、男性の同僚がいたりする。

今まで、優等生として学校社会で幅を利かせてきた私は、根拠のない自信で入社した。早速、直属ではない上司の元で、初めて電話取材などをこなしていった。その結果を、直属の上司に「うまく出来ました」と報告したところ、「それは良かったですね」と皮肉まじりの言い方をされた。今なら、上司同士の対立関係を理解せずに、いきなりいい仕事をしましたと、単純に上司に言ってしまった空気の読めていない感じは、若気の至りとして、羞恥を覚える。しかし、これは氷山の一角だ。学校社会での身のこなしは会社では通用しないと、まざまざと知らされる日々が、一年位続いたのだ。

体育会系の部活動に所属した経験も無かった為、組織のいろはも知らずに入社してしまうと、本当に毎日面をくらう事ばかりであった。その為、失敗が許される新入社員の内に、あちこちにぶつかっては痛い思いをしながら、学んでいくしかなかったのである。

マーケティングのフィールド調査会社に入社した私は、一年もする頃には、クライアント企業への取材や営業、そして資料の作成など、一通りこなせる社員になってはいた。しかし、会社ごとにある暗黙のルールや人間関係などに関しては、本当に不器用なままであった。

会社とは、仕事さえ出来れば認められるという所ではない。理不尽な上下関係があって当然である。そういう空気を察知する能力が高い人が、最終的には生きやすい社会なのでる。

私が仕事から学んだことは、優等生なだけでは社会ではやっていけない、という戒めである。

そして、母親となった現在に至っては、子育てにまでその経験が生きている。勉強だけ出来ても、それだけでは社会に通用しないということを念頭に、育児をしているのだ。

例えば、公園などで理不尽なことが起きても、なるべく口を出さずに見守ることにしている。そうすることで、子供なりに自分で考え、徐々に対処の仕方のバリエーションが増えていき、コミュニケーションの取り方が上手くなっていくからである。

会社での失敗や苦労があったからこそ、子供にとって何が大事なことなのかを、親として考えられるようになったのではないかと、今では思うのである。

数年間の勤務ではあったが、仕事による苦い経験は、自分を成長させてくれたし、少しの自信をくれたと思っている。

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