【 佳 作 】

【テーマ:仕事から学んだこと】
働くってなんだろう H25年
新潟県 佐藤 成子 53歳

地域若者サポートステーションに勤めて6年、日々若者の就労的自立に向き合っています。そこで私は常日ごろ「私たちは働く人のモデルにならなくてはならない」とスタッフみんなに言い続けています。

ところが先日、ジョブトレーニングと称し利用者さんと田植えのボランティアに行った時のことです。田に足を踏み入れてはみたものの、山田の深い泥に長靴を引っ張られ、どうにも次の一歩を踏み出すことができないのです。同じようにあまり経験がないと言っていたみんなは、それでも何とか工夫しながら上手に苗を植えているのに、私は幾ら足を持ち上げようとしてもどうにも出来ず、結局は利用者さんの手を借りて一旦田んぼの外に出してもらいました。そして、長靴を脱ぎ裸足になって再挑戦。何列か植え、遅れを取り戻そうと方向転換しようとした時、せっかく植えた苗の上にどっかりと尻もちをついてしまったのです。常日頃スタッフに言っている働くモデルどころではない泥だらけの私。情けない姿をみんなの前にさらけ出すしかありませんでした。
「あ〜ぁ!これじゃ、みんなの足手まといだね。ごめんね〜」言わずにはいられません。すると一緒に参加していたサポステ卒業生の一人が、
「俺、そんな佐藤さんだから、俺でももう一度職場に戻れると思ったんだよ!」と言ってくれたのです。こんな無様な姿をさらし、私の心は情けなさでいっぱいだったのですが、その言葉が嬉しくってジーンと染みてきました。そして、そんなことを言ってもらえる自分に誇らしささえ感じ、この仕事をしている喜びを実感出来た瞬間でもありました。

いくらかっこつけてもちゃんと見られているのですね。彼が言う通りなのです。今日に限らず常日頃から、私は何ひとつ上手くスマートにこなすことが出来ず、あっちにぶつかりこっちにぶつかりしながら、とても不器用に生きています。ですが、こんな私でも、いいえ、もしかしたらこんな私だからこそ彼らに伝えることが出来るものがあるのかも知れません。ありがたいなぁと思いました。

働き始めた若者がまず最初にぶつかる壁は失敗することのようです。分からない、だから本当は誰かに訊きたい。でも、こんなことも分からないのかと相手に失望されるのが怖くて訊けない。失敗した時、本当に申し訳なくて、情けなくて、もう2度と同じ失敗を繰り返してはいけないと強く自分に言い聞かせる。そんな真面目さを持つ彼らは、真面目だからこそ、失敗してしまうと、職場に対し申し訳なくて、また失敗することが怖くて、結局は会社に行けなくなる。仕事が続かない一要因だと思います。一世代前の我々なら考えられないくらい、現代の若者は繊細でデリケート。知らないという事や失敗するという事を、人としてとてもダメなことと捉えているようです。何でこんな世代が出来上がってしまったのかと親である我々世代が育てた環境を振り返るのですが、若者よ!失敗したっていいんだよ!当然相手は怒るけど・・いいんだよ!失敗しない人生なんてあり得ない!失敗して、そこから何を掴んで立ち上がるかが大切なんだよ!それがその人の価値だよ!何度でも失敗して、その度一緒に立ち上がろうよ!そのたびに自分をバージョンアップさせていこうよ!それをみんなで支える社会でありたいなぁ。そんな社会を目指して私はこれからもこの仕事を続けていきたいなぁと思っています。

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