【努力賞】
【テーマ:私を変えたきっかけ】
私を変えたきっかけ
鳥取県 米子市  藤原 雄作 23歳

私は地元の高校と大学を卒業して、地元の中小企業に就職することができた。私が今の会社に入社した年は、東日本大震災という未曾有の国難に襲われた年でもある。そういった決して生涯忘れることの無い出来事が起こった年に社会人としての第一歩を踏み出した。

私は新入社員研修を終え、本社がある県とは別の県にある営業所への配属となった。初めての県外での生活に不安な気持ちを抱いたことをよく覚えている。会社で会う先輩や上司の方々、お客様、土地、建物全てが私にとっては新鮮なものであり、慣れるのに苦労したことが記憶に新しい。

しかし、私だけではなく、皆が通る道であると自分自身に言い聞かせて日々の仕事をこなしていた。その当時は、仕事が楽しいと思えることはほとんどなかった。そういった時にいつも思ったのが「もっとやりがいのある仕事がしたい」「もっと楽しい仕事がしたい」と他の方には言いづらい悶々とした思いを抱えていた。

入社して半年間の現場実習を終え営業職に携わるようになった。そこで新入社員の私の世話役として一人の先輩の方と行動を共にするようになった。云わば私の兄貴的な存在である。私は思い切ってこの仕事のことをどういう風に思っているかを打ち明けた。そこでその先輩に言われたのが「やりがいのある仕事って何?楽しい仕事って何?そういう仕事があるなら逆に教えて欲しい」と言われた。私は驚いた気持ちとともに返す言葉が見つからなかった。そうしてその先輩と共に仕事をしていく内にそういった消極的な考え方をしている自分が情けなく思えてきた。さらに先輩に言われた「物を売るのではなく、名前を売れ」という言葉が私の考え方を変えた。

何故なら、その先輩の携帯電話が鳴らない日はない。一日何十件もの電話が平気でかかってくる。しかものその内容も様々である。例えば「ドアノブの調子が悪いから見て欲しい、洗濯物干し用のつっかえ棒を買ったけどうまく付けれない」など我々の専門外の内容も多々ある。しかしお客様は一見誰にでも頼めることであるが「○○さんだったらなんとかしてくれる」という思いをもって先輩にお願いしてくださるのだなあと思った。そういう専門外のことをお願いされたときの先輩はいつもより楽しそうにこなしている。また、その先輩の姿を見たお客様は非常に満足なさっていた。それは普段から先輩が「物を売るのではなく名前(自分)を売っている」からであると思った。先輩に会う前の私だったらどう思っただろうか。何でそんなことを頼んでくるんだろう、他の人に頼めばいいだろうと思ったのかもしれない。

今では数ある同業他社の中から我が社を選んでいただき、尚且つ指名でお願いをしてくださることが少なからずある。見ず知らずだった方が自分を必要としてくれていると考えると非常に嬉しい気持ちになった。そういう気持ちを抱くようになってから毎日の仕事が楽しくて仕方ない。そういう気持ちを持つようになったのは他でもない先輩の存在である。

私は先輩に出会わなければ今のように変わることはできなかっただろう。そういう先輩に私もなりたいと思った。普段は恥ずかしくてなかなか言えませんが先輩に心から「ありがとうございます」と言いたい。

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