私は高校卒業後の進路として「建設業界の配管工」という現在の職種に強い憧れを抱いていました。それは私の希望であった「手に職を付ける」というイメージに一番近く、入社が決まった時には大変嬉しかった記憶があります。
配管工というと、大型現場での作業が大多数かと思われがちですが、私の会社では一般住宅関係の仕事が多く、日々お客様や工事関係の業者さんと接する機会の多い職場です。その為、現場でのコミュニケーションが非常に重要であり、仕事の腕が良いだけではスムーズで良い仕事が提供できない難しさがあります。(それに気付いたのは比較的最近ですが…)
入社間もない頃は、先輩社員の指示通り動く事で頭が一杯で、自分からお客様にコミュニケーションを取る事は全くと言ってよい程なかったと思います。とにかく、施工の技術や知識を磨きさえすれば良い施工者になれると思って夢中になっていた時期でした。
入社から三年が過ぎた頃、上司からある現場を一人で担当する様に依頼されました。内心、「やっと自分の現場が持てる!」と小躍りしましたが、この時も作業内容や工程の事で頭が一杯でした。
いざ、担当現場に行き作業開始となる訳ですが、日々お客様や監督さんと会話はするものの、私からの話題は工事の内容か天気、ニュースなど、当たり障りの無い内容しかありませんでした。周りの職人さんは気軽に色んな話を楽しそうにされ、自分とは何が違うか少し悩みました。
そして、更に三年が過ぎた頃に勤務先の方針が大きく変ります。「お客様に感動と安心を」という会社方針が掲げられ、全社員がどうすれば達成できるかを考えました。私の所属する工務課では、直接受注を頂いたお客様の「ハートをキャッチしよう」を合言葉に、現場完成後にお客様と記念撮影をする事によりお客様との距離を縮め、満足感を高めようと決めました。
初めは上司から言われるがまま、それこそ「仕事だから…」とお客様に記念撮影をお願いしていましたが、この取組を繰り返していると次第に、「お客様が何を求めているか?」「どうしたら満足して頂けるか?」といったことを真剣に考える様になりました。
それは、「仲良くなったなぁ。良くお話ができたなぁ」という手応えを感じるお客様だと、記念撮影をお願いしても必ず快諾頂けるようになっていることに気が付いたからです。
その為に私は担当現場でのコミュニケーション能力アップやプロとしての情報提供、提案を行うよう心掛けました。その結果、私の担当する現場では殆ど100%、お客様と記念撮影が出来るようにまでなりました。また、それにつれてお客様アンケートの中に感謝の言葉や満足した内容を書いて返送して頂けるお客様が倍増したのに驚き、大きな喜びがありました。
お客様や工務店の方々と上手くコミュニケーションする事がお互いの信頼関係を築く第一歩と気付くこともできました。今では担当現場のアンケートが回覧されるのが私への通信簿のようで楽しみで、それが新しい現場へのやりがいとなっています。
今後は、我が社の若年社員に工事の技術は勿論、仕事を頂けるお客様にいかにして満足して頂けるか、感動して頂けるかを伝えて行きたいと強く思っています。私達施工者の宝は仕事を頂けるお客様であり、お客様の心から満足して頂けた笑顔です。辛い仕事でも、お客様の笑顔が私の仕事に対する原動力であること、そしてこれから出会うお客様一人一人とのご縁を大切にして楽しく仕事を行い,「筒井君」と気軽に声を掛けて頂ける様に自分を更に磨きたいと思っています。